第7弾 佐渡

持続可能な島へ 島内の取り組み

新潟日報 2021/10/06

<中> 次世代育成

学びで根付く郷土愛 住民らと協働 生徒が活力

 佐渡が活力を持ち続けるためには、人材育成が不可欠だ。教育現場では、地域を学ぶことを通して、郷土愛を育む学習に力を入れているほか、生徒と地域が一体となって地域の課題解決に取り組み、地域に活力を与えている。

 トキや能、金銀山…。島内各校では、佐渡固有の自然や文化、歴史をテーマに、ユニークな学習が定着している。市教育委員会は子どもたちが地域を知り、地域資産や文化を大切にすることを狙う。学習の浸透もあってか、全国学力テストのアンケートでは、郷土愛が強い傾向が表れている。

 子どもたちは進学で島を離れる場合が多いが、周囲は教育のためならと背を押す風土がある。新発田靖教育長は「佐渡には魅力がたくさんある。郷土のいいところを心に焼き付け、将来島で活躍してほしいし、島外だとしても佐渡を応援してくれる人材を育てたい」とする。

 加えてここ数年は、持続可能な社会のつくり手を育む取り組みが進められている。

 新穂中学校(新穂瓜生屋)では、昨年度から国連の持続可能な開発目標(SDGs)をテーマに全校で課題解決に取り組み、生徒が自主的に活動。これまで募金や創作紙芝居の上演といったアイデアが実を結んだ。

 本年度は、より地域に根差した課題に焦点を当てる。観光をテーマにしたグループは地域商社などと協力。地元の新たな魅力を発掘して、動画を作成、発信しようとしている。生物多様性に目を向けるグループは、かつてトキが生息していた生椿集落の自然や環境保護活動を地域住民に紹介するイベントを開き、一般市民が10人近く参加した。

 生徒の取り組みには住民も関心が高く、協力に積極的だ。参加者アンケートには「中学生がやっているということが魅力的だ」とあり、生徒の高い発信力を物語る。

 研究主任の小黒淳一教諭(42)は「地域と一緒に活動しながら、力を発揮したい」と取り組みを進める。

 学びを支える教員も変化が求められる。教育関係者有志の研究会では、「問いを持つ力が大切」と、新たな教育プログラムの可能性を探る。子どもたちが自分から興味のあることを見つけて積極的に探求し、協働する姿勢を伸ばしたいとする。代表を務める二宮小の斎藤紗織教諭(41)は「好きなことにのめり込めば自然と探求し、対話や協働が生まれる。その姿勢が身に付けば、災害や人口減などにもしなやかに対応できるのではないか」と話す。

 佐渡を知り、好きになり、もっと知りたいと探求する。その循環が根付けば、島の未来は明るい。

「トキの聖地」生椿集落を市民に紹介する新穂中生徒。トキについてのクイズを出し、分かりやすく説明した=2021年9月、佐渡市生椿地区

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