第2弾 魚沼

雪国、再興

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雪国 本当にダサいのか

漂う閉塞感 ナンバー頓挫

新潟日報 2019/09/27

 「『雪国』という言葉、そして実態へのマイナスイメージがあったのでは」。2018年3月、魚沼圏域3市1町(南魚沼市、十日町市、魚沼市、津南町)で進めてきた、自動車のご当地ナンバー「雪国魚沼」の導入が頓挫した。当時、関わった行政関係者は冷静に分析しつつも、無念そうに振り返る。

 魚沼地域の一体感と、古里への誇りを育もうと、導入が進められたご当地ナンバー。主導した首長らの熱意とは裏腹に、地域での導入機運は高まりを欠いた。この関係者は、導入を急ぎすぎた点や説明不足もあったと反省する。

 断念を決定的にしたのは同年2月に実施した住民アンケートの結果だった。「長岡」の継続を求める声が7割近くを占めた。それ以上に、関係者に衝撃を与えたのは、「雪国」の呼称に「ダサい」との声すらあったことだった。

 各市町に寄せられたパブリックコメントでも、「若者のUターンなどに影響が出る」、「県外や都市部に車で出る時、恥ずかしい」など厳しい意見が届いた。

頓挫した雪国ナンバーのイメージ。関係者からは「雪で稼いでいるのに、『雪国』に反対するなんて」という声も挙がる=2017年12月、南魚沼市役所

頓挫した雪国ナンバーのイメージ。関係者からは「雪で稼いでいるのに、『雪国』に反対するなんて」という声も挙がる=2017年12月、南魚沼市役所

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 江戸時代の文人、鈴木牧之が著した「北越雪譜」に、こんな描写がある。初雪に、越後の人は「今年もまた、雪の中に埋もれてしまうのかと悲しむのが常であって、それもこれも、この越後に生まれたわが身の不幸というべきだろう」(浜森太郎訳「北越雪譜」)。雪見船を仕立てて芸者と出掛けるなどした江戸の様子とは対照的とする。

 昭和の頃までの冬の写真は、1階の屋根が埋まるほど雪が積もった様子が記録されている。1階の玄関から階段をつくったり、2階の窓から出入りしたりした。

 かつては「子どもに『こんな雪が降る所に住まず、別の地域に移った方がいい』と言っていた人もいるよ」。南魚沼市に住む、60代の商工関係者は振り返る。

 少雪となった今でも、魚沼地方では早い所で11月から雪が降る。年によって、山あいでは5月の大型連休すぎまで雪が残る。最深積雪の平年値(2月)は魚沼市(小出)で193センチ、湯沢町で200センチ、津南町で271センチに上る。

 雪の中で育った南魚沼市の50代男性も「3日も4日も雪が降り続けば、さすがにぐったりする」という。

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 雪はそれほど嫌われ者なのか。外から移り住んだ人は見方がやや違う。宮城県出身で、南魚沼市に住む会社員の男性(25)は「除雪がしっかりしていて、日常生活に支障はないと思った」と話す。

 魚沼地方の大動脈、国道17号は頻繁に除雪車が走る。南魚沼市道の約56%の路線では、除雪車が走るか、消雪パイプが整備されている。市道には林道のような冬季は使わない道も含まれており、同市は「住宅や事業所に接する道の除雪はほぼ100%になっている」と説明する。

 栗生さんは、平野部で大雪となった18年、新潟市に住んでいた。「道路ががたがたで動けず、よっぽど大変だった」と振り返る。

 1年半前、思わぬてんまつとなったご当地ナンバーの議論。「雪国を理由に反対したというのは少し違うのでは」と振り返るのは、湯沢町の50代男性。同町で生まれ育った男性は「いくら除雪が行き届いても、雪が降ると閉塞へいそく感がある。雪国が嫌というのは、何となく、しょーしい(恥ずかしい)というレベルではないか」とつぶやいた。

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