第2弾 魚沼

[未来のチカラ in 魚沼]

雪国を耕す磨く育む 10年後への提言

新潟日報 2019/10/18

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酒の宿玉城屋社長
山岸裕一さん(37)=十日町市=

移住者向けに住宅を

山岸裕一さん

山岸裕一さん

 「移住定住を阻む一因は住宅問題」と経営者の立場から指摘する。

 3年前、十日町市の松之山温泉にUターンし、家業の旅館を継いだ。身内などで切り盛りする家族的経営を改め、現在は23人の従業員を雇用する。東京から優秀な人材を採用した。

 そこでネックになったのが住宅問題だ。「松之山地区には良質な賃貸住宅がほとんどない。相場に見合う良質なアパートがない。公営住宅は所得制限の額が低すぎたり、募集期間が短かったりして入居できない」と不満を漏らす。

 住宅問題は「中山間地が多い魚沼が抱える共通の課題ではないか」とみている。自治体などが空き家を補修し、移住希望者が一定期間、入居できる仕組みづくりを求める。

 観光が魚沼地域の産業をけん引すると予測する。増大する訪日観光客の対応策として、「語学が堪能なスタッフが常駐する総合窓口やツアーガイドを用意するべきだ」と語る。

 また観光振興に不可欠な2次交通の整備も求める。「魚沼エリアは、車がないと移動が難しい。越後湯沢駅と主要エリアを結ぶ周遊バスを、1日複数回運行したらどうか」と提案した。

<やまぎし・ゆういち> 十日町市生まれ。松之山温泉「酒の宿玉城屋」社長。家族経営の宿を日本酒と料理に力を入れ高級路線に転換。経営難だった市の宿泊施設を買い取り再生した。「第4回旅館甲子園」で今年、全国1230施設の頂点となるグランプリを受賞。

旅行会社 HOME HOME Niigata社長
井比晃さん(35)=十日町市=

2次交通の整備必要

井比晃さん

井比晃さん

 十日町市で2年前、旅行会社を立ち上げ、地域に根差した観光ツアーを手掛ける。それだけに魚沼地域で、旅行商品を企画する際、公共交通の貧弱さがネックだと、痛感している。

 観光の形態がバスを使った団体旅行から個人旅行に変わる中、「自家用車で来なければ、主要駅からの2次交通の手段はタクシーとなる。タクシー代を旅行代金に上乗せすると相当な金額になる」と悩む。

 米国ではスマートフォンアプリの配車サービスを使い、一般の車にタクシーよりも安い料金で客を乗せる仕組みが定着している。

 国内では京都府京丹後市で始まった。「魚沼エリアの自治体も導入したらどうか」と提言。運転をしない高齢者にとっても必要な施策だと訴える。

 自身は地域おこし協力隊員として4年前、同市に移住し、その後定住した。

 移住・定住の促進策としては、首都圏からIT系企業の誘致を自治体が進めるべきだと考える。

 誘致促進策として「湯沢のマンションを丸ごと1棟、社宅として提供できる仕組みをつくったらどうか。地元消費経済にも影響し、給与水準の改善にもつながる」と語っていた。

<いび・あきら> 柏崎市生まれ。大手広告会社の新潟支社に勤務していたが、仕事で訪れた十日町市の風土や人情に引かれ、退社。2015年に地域おこし協力隊員となり、以来同市に住む。17年に旅行会社「HOME HOME Niigata」を設立した。

記事一覧

[未来のチカラ in 魚沼]

雪国を耕す磨く育む 10年後への提言<1>

新潟日報 2019/10/16

[未来のチカラ in 魚沼]

雪国を耕す磨く育む 10年後への提言<2>

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新潟日報 2019/10/18

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雪国を耕す磨く育む 10年後への提言<4>

新潟日報 2019/10/19