[未来のチカラ in 魚沼]
伊藤綾さん
10年後の未来に求めるものは地域の稼ぐ力。その前提として、「稼げる人材の育成が欠かせない」と指摘する。
南魚沼市で今年、採用に苦戦している企業が問題点を話し合う会議があった。参加した人事担当者の多くが、自社の理念やビジョンをよく理解していなかった。「そんな企業には優秀な人材は寄りつかないし、稼げるサービスや高い付加価値の製品を提供できない」と厳しい目を向ける。
稼げずに給与が低い企業の特徴の一つに、従業員の自己研さん不足があるという。従業員の感性や感度を高めるために、定期的な研修の導入を提言する。
外から優秀な人材を呼ぶのも解決策の一つだが、「その人に頼り切りになる恐れもある。今いる人材が育たなければ本末転倒ではないか」と語る。
魚沼地域を一つの広域エリアとして打ち出すために、行政には効率化を求める。住民票発行や、観光と移住定住の宣伝などは広域で取り組み、コストを圧縮すべきだと考えている。
「民間も、経理マンなどの人材を複数の店舗で共有するなどして、利益を高める仕組みを考えたほうがいい」と話した。
<いとう・あや> 柏崎市出身。流通大手イオングループでデベロッパー事業を行うイオンモール勤務を経て、湯沢町に今年、移住。地域資源や人の力を生かしたまちづくりと移住定住を促進する会社「きら星」を設立。職業紹介やテレワーク推進事業を行っている。
デイブ・パドックさん
津南町のマウンテンパーク津南で、首都圏などの子どもを対象に野外英語教育を展開する。夏休みや冬休みなどを利用して、年間2千人以上の子どもたちが訪れている。
「町外からお金をもってくる『稼ぐ力』が必要だ」として、10年後、魚沼地域が力を入れる分野は観光業だとみている。
「魚沼の魅力は、自然の豊かさや雪国独自の生活様式、文化やアートがあること。雪国での体験を求める観光客から、高い対価を得ればいい」と語る。官民一体で観光地づくりを推進する組織「DMO」の整備が必要だとして、自治体の枠を超えた取り組みを提言する。
移住定住を進めるには、首都圏に比べて低い地元の給与レベルと、住宅の質に課題があると考える。
「わが社の社員の給与水準は、町のレベルよりもかなり高い。良い人材を東京から呼ぶには、それなりの給与が必要だ」と強調する。
住宅に関しては、地元の賃借物件が少なく、家賃に対して質が低いのが悩みだという。「高い質の住宅を整備し、一定期間、賃借した後、希望があれば購入できるような施策があればいい」と話した。
<でいぶ・ぱどっく> 米国アーカンソー州出身。ENGLISH ADVENTURE社社長。2016年に東京から津南町に拠点を移す。小学生から高校生向けにキャンプをしながら英語を学ぶプログラムを提供。これまでに約2万人が参加した。津南町の未来会議メンバー。
(おわり)