「越後のミケランジェロ」と呼ばれる彫刻師・石川雲蝶は幕末から明治にかけて活躍し、とりわけ魚沼地域には数多くの作品が残されている。 新潟日報社は10月、「未来のチカラ in 魚沼」の一環として、代表的な作品のある、四つの寺を巡るツアーを行う。ガイドを務める南魚沼雲蝶会会長で、 にいがた観光カリスマの中島すい子さんと共に一足先に名作を訪ね、見どころを聞いた。
魚沼市根小屋にある永林寺本堂の欄間には、天女たちが笛や太鼓などの楽器を奏でている華麗な姿が彫られている。
天女が笛の穴に添えた指を見てください。しなやかで、折れそうなくらい細いでしょう。雲蝶さんは木を細かく彫る高度な技を持っていたことが分かります。
永林寺の本堂の欄間にある天女の彫刻。高い技術で華麗な姿を浮かび上がらせている
これが制作されたのは170年くらい前の江戸時代。当時は「目細、鼻高、桜色(の肌)」が美人の条件といわれ、その通りに彫ってあります。また、雲蝶さんが当時お気に入りだった女性をモデルにしたという言い伝えもあります。
天女たちはそれぞれ表情が豊かで、まとっている衣装は赤と青の組み合わせが鮮やかです。相当手間をかけて、岩絵の具を塗ったのでしょう。
向かって右側の欄間には2人の女性の背中が彫られており、片方が既婚、もう片方が未婚といわれている。
2人の背中をよく見比べて、どちらが既婚で、どちらが未婚か考えてみてください。
永林寺の欄間に彫られた2人の女性の背中。片方は既婚、もう片方が未婚といわれる
背中にはかすみがかかり、ちょっと隠れた部分があります。それによってさらに色気が増しています。細かい所まで気を配っているのです。
この作品には気付かないような部分に、雲蝶さんの刻銘があります。「これは自分の仕事だ」と、さりげなくアピールしたかったのでしょう。遊び心を感じます。
お寺は本来、遊ぶ場所ではありませんが、そこへあえて遊び心を持ち込んでしまう。雲蝶さんの人となりが分かるような気がします。
雲蝶さんの作品は、2回、3回と足を運ぶと、今まで目が向かなかった所にも目が向き、改めて感動することがよくあります。だから、家族や友だちを誘って来るリピーターもいらっしゃいます。
雲蝶さんの頭の中の引き出しにはきっと彫刻の設計図がいくつも入っていて、作品を置く場所に合ったものを出していたのではないでしょうか。
お寺には
(魚沼総局長・中川一好)
永林寺
住所:魚沼市根小屋1765
TEL:025-794-2266

