第2弾 魚沼

魚沼の雲蝶さん カリスマガイドと訪ねる

<2> 西福寺(魚沼市)

竜と虎 圧巻の美しさ 立体感生む深彫りの技術

新潟日報 2019/09/05

 南魚沼雲蝶会会長の中島すい子さんと、魚沼市大浦の西福寺を訪ねた。同寺の開山堂(位牌堂)の天井を見上げると、三間(約5.4メートル)四方に色鮮やかな、迫力満点の作品が視野いっぱいに広がる。

 石川雲蝶さんの「道元禅師猛虎調伏之図どうげんぜんじもうこちょうぶくのず」は、まさに「息をのむ美しさ」「ただただ圧巻」です。

西福寺の開山堂の天井。色鮮やかな岩絵の具に彩られた、立体感のある彫刻は見る者を圧倒する

西福寺の開山堂の天井。色鮮やかな岩絵の具に彩られた、立体感のある彫刻は見る者を圧倒する

 禅僧の道元が中国に修行に出掛けた際、虎に襲われそうになりました。道元が拄杖しゅじょう(僧の携える杖)を投げ付けると、拄杖は竜になって虎を退治しました。

 天井の写真をよく見ると、左奥に座禅をしている道元、中央に体をうねらせる竜、右手前に竜をにらみつける虎がいるのがお分かりになると思います。

 木の奥までのみを入れる深彫りによって、立体感が生まれます。その立体感が見る者に深い感動を呼び起こすのです。ぜひ実物を見てもらいたいと思います。

 ただ、僧と虎と竜だけを彫ったのでは寂しいですよね。雲蝶さんは、マツの木の間をすり抜けるツバメ、翼を広げたタカ、滝を登るコイ、様子をうかがうサルを隙間なく、びっしりと彫っています。

 いったい何枚の板を使っているのか、何色の岩絵の具を塗っているのか、どのような工程で制作したのか。今となっては知る由もありません。

 石川雲蝶は西福寺の開山堂にも遊び心のある彫刻を残している。奥まった場所、光の届かない暗がりにある小ぶりな欄間だ。

西福寺の開山堂の欄間にあるサルの彫刻。ライトを当てなければ見えない場所にある

西福寺の開山堂の欄間にあるサルの彫刻。ライトを当てなければ見えない場所にある

 サルが片手でマツの木にしがみつき、もう片方の手を驚くほど長く伸ばして、湖に映った三日月をすくい取ろうとしているのです。

 この欄間は、私もつい最近、お寺の掃除をしていた人に教えてもらったばかりなんです。

 訪れた人が誰も見ないような場所にこんな楽しい彫り物をするなんて、雲蝶さんの遊び心は半端ではありません。

 ところで私にはサルがバナナを取ろうとしているように見えたのですが、江戸時代にはまだありませんよね。

 (魚沼総局長・中川一好)

西福寺
住所:魚沼市大浦174
TEL:025-792-3032

[ 魚沼の雲蝶さん ] 記事一覧