第2弾 魚沼

魚沼の雲蝶さん カリスマガイドと訪ねる

<4> 瑞祥庵(湯沢町)

北風に向き合う勇姿 ギヤマンの目玉でにらむ

新潟日報 2019/09/07

 南魚沼雲蝶会会長の中島すい子さんと最後に訪れたのは、湯沢町土樽の瑞祥庵。山門の仁王尊「阿形あぎょう」と「吽形うんぎょう」が石川雲蝶の作品だ(写真は吽形)。

瑞祥庵の山門の仁王尊「吽形」。小千谷の商人が湯沢でもうけたお礼に寄進したと伝えられる

瑞祥庵の山門の仁王尊「吽形」。小千谷の商人が湯沢でもうけたお礼に寄進したと伝えられる

 約80センチの仁王尊は170年ほど前に彫られました。赤、青、緑といった岩絵の具が塗られていますが、山門が北側を向いているため、北風をまともに受けて風化が進んでいます。

 訪れる人の中には「ボロボロじゃないか」と不満を漏らす人もいます。しかし、風化した仁王尊から、逆に雪国の歴史に思いをはせることもできるのです。

 仁王尊が作られた頃、現在の湯沢町では織物の生産が盛んで、各地から仲買人が出入りしていました。

 中でも商売熱心な小千谷の商人が、もうけさせてもらったお礼に仁王尊の1体を寄進したと伝えられています。それが吽形です。現在の価値に置き換えると、165万円くらいだったと考えられます。

 仁王尊は2体とも約90年前に1度、塗り替えられた。その作業を請け負った塗り師も小千谷の人だった。

 私は塗り師の息子さんにお話を伺ったことがあります。息子さんによると、塗り師は「仕事が終わって仁王尊を起こそうとした時、台の裏に石川雲蝶の刻銘を見つけ、びっくりした」そうです。

 また「ひげがあまりにも細かい線でびっしりと描かれていたのに、大ざっぱに描き直してしまった」とも話していたそうです。

 雲蝶さんが作ったばかりの頃の仁王尊はいったいどんな顔をしていたのでしょうか。それを想像するのも楽しみの一つです。

 仁王尊の目にはギヤマン(ガラス玉)が用いられ、その恐ろしさを増しています。雲蝶さんがよく使った技法です。

 このギヤマンをどうやって目にはめ込んだのでしょう。木をお湯で軟らかくして入れる方法があるといいますが、実際は分かりません。

 吽形は「そこまでやらなくてもいいのに」と思うほど、左手をしなやかに曲げています。これも雲蝶さんの作品の特徴です。それにどんな意味があるのかも分かっていません。

 おわり

 (魚沼総局長・中川一好)

仁王尊「吽形」の左手。手をしなやかに曲げるのが石川雲蝶の作品の特徴だ

仁王尊「吽形」の左手。手をしなやかに曲げるのが石川雲蝶の作品の特徴だ

瑞祥庵
住所:湯沢町土樽4595
問い合わせ/湯沢町観光協会
TEL:025-785-5505

[ 魚沼の雲蝶さん ] 記事一覧