過去の衆院選

衆院選2014

テーマ特集5「憲法改正」

9条視野に議論加速か

【2014/12/12】

首相、演説では言及避ける

 今回の衆院選は、憲法改正のための法的手続きが整ってから初めて迎える国政選挙だ。与党自民党は選挙戦で憲法改正を前面には掲げていないが、改憲は安倍晋三首相の「悲願」。衆院選の結果次第では長期政権が視野に入ってくる安倍政権が、改憲に向けた動きを加速させる可能性がある。

 衆院選公示日の2日、安倍首相は福島県相馬市の漁港で第一声を上げた。「今回は私たちが進める経済政策が問われる選挙だ」。拳を振り上げてアベノミクスの成果を語る一方で、憲法改正には言及しなかった。

 従来に比べ、改憲を強調していないのは自民党も同じだ。同党は野党時代の2012年4月、改憲の草案を公表。「国防軍」を条文に入れ、天皇を「日本国の元首」に。国旗国歌の尊重義務を国民に課し、「生命・自由・幸福追求権」では現行の「公共の福祉に反しない限り」を「公益及び公の秩序に反しない限り」に変更する-。

 こうした内容の草案を、昨年7月の参院選公約では具体的に示しアピールしていたが、今回は「改正原案を国会に提出し改正を目指す」として改正の中身には触れず"控えめ"な表現となった。

<進む環境整備>

 安倍首相は衆院選で勝利すれば、来年9月の自民党総裁選でも再選される公算が大きい。任期は3年で、安倍首相は18年9月まで党総裁の座にいられることになり、政権の長期化が可能になる。反発を招きかねない改憲を訴えるより、経済政策の成果を打ち出して議席を確保し、安定した政権基盤を築こうとしているように映る。

 一方で、改憲に向けた環境整備は進んでいる。第1次安倍政権時代の07年5月に成立しながら、投票年齢などで積み残しがあった国民投票法改正に手を付け、今年6月に、当面の投票年齢を「20歳以上」とする改正法を成立、施行させた。

 自民党側でも改憲の機運を醸成しようと、今年4月から党員対象の対話集会をスタート。2年間に全国100カ所程度で開くという。

<「実績」目指す>

 「教育の再生、さらには将来の憲法改正に向けて頑張っていく。これが私の歴史的な使命だ」「制定過程で(見ると)、進駐軍がつくった。時代にそぐわない内容もある」。第2次政権発足後の安倍首相の発言からは、憲法改正へのこだわりが随所にうかがえる。

 集団的自衛権の行使容認については、改憲でなく、解釈変更の閣議決定で今年7月に実現したものの、安倍首相の最大の関心は9条改正にあるとみられる。

 ただ、2次政権で当初、照準を合わせたのは、改憲の発議要件を定めた96条だった。「衆参両院の3分の2以上の賛成」はハードルが高すぎるとして緩和する改正を目指したが、世論の反発や連立与党の公明党の反対もあり、いったん矛を収める形となった。

 現在、論議の俎上(そじょう)にあるのは、大規模災害や有事の際に個人の権利を制限することなどを定めた「緊急事態条項」の新設や、公明党などが主張する環境権の追加。衆院選と16年夏の参院選の結果によっては、同年秋の臨時国会でこれらを発議し、17年前半に国民投票実施というスケジュールもあり得る。その「実績」を踏まえ、安倍首相や自民党は「本丸」である9条の改定に取り掛かる可能性がある。

憲法改正をめぐる動き
多くの政党 改正否定せず
 共産、社民は護憲明示

 衆院選の公約で、自民党は「国民の理解を得つつ憲法改正原案を国会に提出し、国民投票を実施、改正を目指す」と記した。

 連立を組む公明党は、必要な条文を加える「加憲」を掲げ、環境権を例示した。9条については戦争放棄などを「堅持する」とする一方で「議論の対象として慎重に検討する」と含みを残した。

 維新の党は首相公選制の導入など統治機構改革のために改正が必要と訴え、次世代の党は新憲法の制定を唱えて「自衛隊に関する規定を新設する」とした。

 「新たな時代にふさわしい改正の議論を起こす」とするのは新党改革。民主党も「国民と対話を進め未来志向の憲法を構想する」としており、いずれも改正を否定していない。

 これに対し、はっきりと護憲を打ち出す党も。共産党は「解釈改憲も明文改憲も許さない」。社民党も「平和憲法を変えさせない」との考えを示す。

 生活の党は「憲法の平和主義に基づき国家を守る」としている。

憲法についての各党の公約内容

≪ 衆院選2014 トップへ