第1弾 上越地域

Yes,We LOVE! 訪日外国人に聞く

<2> 落ち着き求めて妙高へ

眼前に銀世界、温泉街もく

新潟日報 2019/03/01

 「信じられないほど良質で、たくさんの雪が目の前にある。朝から晩までスキーを楽しんでいるよ」。妙高市赤倉の飲食店で休憩していたオーストラリア人のリアム・ウッドさん(27)は「最高の休暇だ」と繰り返した。

 40度を超す灼熱(しゃくねつ)のシドニーから2週間の日程で来日。スキーで訪れた長野県で日本がすっかり気に入り、「評判を聞いて初めて妙高に来た」。長野県白馬でスキーざんまいの1週間を過ごした後、東京観光などに3日間を充て、再びスキーを楽しもうと妙高入りした。

 恋人のサラ・ピーティーさん(24)は「彼に誘われて初めて来日したけれど、山や町並みの美しさに感動している。焼き肉やラーメン、すしも、本当においしい」とほほ笑んだ。

 また妙高に来たいかと尋ねると、そろって「もちろん」「絶対に来るわ」と笑顔でうなずいた。

「赤倉銀座」と呼ばれる通り。ゲレンデと街を往復するスキーヤーやスノーボーダーは外国人が目立った=2月19日、妙高市赤倉

「赤倉銀座」と呼ばれる通り。ゲレンデと街を往復するスキーヤーやスノーボーダーは外国人が目立った=2月19日、妙高市赤倉

 冬場に来日する外国人の主な目的はスキーやスノーボードだ。新潟日報社が訪日客50人余に実施した聞き取りで、日本に来るのが2回目以上というリピーターは半数超を占めた。「街やロッジから歩いて行ける距離にパウダースノーがあるのはすごいことだ」。妙高市ではゲレンデまでの近さを絶賛する声が相次いだ。

 妙高市の調べでは、訪日客の入り込みが2016年は約3万7200人、17年は約4万5900人、18年は約5万5600人と増加の一途をたどる。9割がオーストラリア人だという。

 「『ジャパウ』はオーストラリアのスキーヤーに有名」。リース・リディさん(27)はジャパン(日本)とパウダースノーを掛け合わせた造語を教えてくれた。

 2015年3月の北陸新幹線開業後、妙高に行きやすくなった。17年12月にはスキー場11コース、計257室を持つロッテアライリゾート(妙高市)がオープンし、受け皿が飛躍的に増えた。

 上越地域を訪れる外国人を支援している上越市のNPO法人「謙信の郷」理事の長尾早苗さん(51)は「白馬から妙高へのルートができている」と指摘する。「訪日客から『白馬は西洋化してつまらなくなった』とよく聞く。日本に慣れた人ほど、落ち着いた雰囲気で温泉街もある妙高に強い関心を持ち、『妙高は良かった』という情報が拡散した」。

 北欧諸国の人たちが見られるようになったのは、少し前に機内誌で「Myoko」が紹介されたことも一因とみる。

 旧正月「春節」の大型休暇で妻とロッテに滞在していた嘉勤さん(50)は「日本への旅行は5回目。東京や大阪、名古屋、沖縄に行ったことはあるが、妙高は初めて。(交流サイトの)SNSで妙高の評判を知った」と話す。

 「行き帰り以外、妙高から全く出ない」(オーストラリア、69歳男性)、「1週間ずっと妙高にいる」(香港、40歳男性)との外国人も多く、訪日回数が多い人ほどその傾向は顕著だ。

 「込み合っていないところがとてもいい」。妙高は5度目だという香港在住のドイツ人、マット・バイスさん(47)は2月上旬、友人一家とスキーをしに赤倉に来た。毎年のように来日する友人のピーター・ローデンベックさん(50)も「白馬や野沢温泉、ニセコ(北海道)は、今や東京・六本木だよ」と混雑ぶりを皮肉り、「妙高はスキーには最高。何より静かだ」と相づちを打った。

 ただ、騒々しさを避けて妙高に来た外国人からは早くも「第2の白馬」を懸念する声が出始めている。

 友人6人と赤倉でスノーボードをしていたオーストラリア人のペンタウ・ジィラチェックスコットさん(33)は「観光客が増えた白馬は、サービスがどんどん低下した。妙高は、日本本来の良さが失われないようにと願うばかりだ」と話した。

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