第1弾 上越地域

[未来のチカラ in 上越]

Yes,We LOVE! 訪日外国人に聞く

<5> 飽きさせない仕掛けを

周遊ルート発信 不十分

新潟日報 2019/03/06

 外国人旅行客の増加が目覚ましい上越地域。しかし、スキーシーズンが終わると、波が引くようにその姿は消えていく。冬の活気をどう次に生かせるのか。取材に当たった上越支社報道部の笹川比呂子、妙高支局長の山本司、糸魚川支局長の黒島亮の3人が、地域の課題や可能性を語り合った。また、国内外のスキー客らを糸魚川市に呼び込んだ「糸魚川シーフードシャトルバス」実行委員会幹事長の片山良博さん(43)に、上越地域の潜在力や県境をまたいだ連携の将来についても聞いた。

 

山本 冬の妙高市のスキー場周辺は、今や日本人が少数派だ。特に赤倉は、お客だけでなく働く人も外国人が目立ち、外国人資本の宿も30軒ほどに増えた。市役所などがある新井地域とは全く違った雰囲気だ。

 

黒島 長野県白馬村から糸魚川に向かうシーフードシャトルバスは、意外と日本人の利用が多い。白馬周辺の店は訪日客で混み合い、日本人客が夕飯を食べられなくなっている。糸魚川駅周辺の店は、白馬の日本人の夕食需要も取り込み始めている。

 

笹川 上越地域にいた訪日外国人の半数以上が、ニセコ(北海道)や白馬・斑尾(長野県)を訪れたことがあるリピーターだ。妙高はニセコなどの先進地に比べ、静かで地方らしい素朴さが喜ばれている。ただ、同じ理由でよそに移っていくのは時間の問題かも。

 

山本 訪日客で妙高がにぎわうのも3月いっぱいで、通年ではない。地元の経営者や観光協会は強い危機感を持っており、自転車やトレッキングなどの誘客対策も検討されている。冬場もオーストラリアに続く他の国々の需要の開拓が欠かせない。

 

黒島 宿泊施設や店が増えても、冬は働き手が不足し、オフシーズンは逆に余るという問題がある。通年で来てくれる飽きさせない仕掛けや仕組みを考えないと地元の雇用は安定せず、人口減に拍車が掛かるのではないか。

 

山本 妙高の旅館経営者や区長たちは、コミュニティーの一員という意識を持ってほしいと、3年前から外国人オーナーと交流を続けている。海外で暮らした経験があるIターン者も増え、外国人と古くからの住民との橋渡し役になりつつある。地元に愛着を持つ人が増えるような地道な取り組みが、地域の魅力を高める上でも鍵になる。

 

笹川 訪日客は活動的な人が多く、滞在中に日本国内を広く移動していることにも驚いた。あるオーストラリア人男性は、前半に妙高でスノーボードをし、後半は京都や長崎、ウサギで有名な大久野島(広島県)にまで足を延ばしていた。だが、日本が大好きな彼らの間でも「新潟」や「上越」の知名度はゼロに近かった。上越市の高田公園や春日山城跡、直江津経由での佐渡島巡りなど、冬以外も楽しめる周遊ルートの発信が不十分だと思った。

 

山本 妙高署には今シーズン、パスポートや財布など訪日客の落とし物がいくつか届けられ、署員は次の滞在先に郵送している。受け取った持ち主はとても感激するらしい。声を聞かせてもらった訪日客はみんな人情に厚く礼儀正しい日本人や、清潔で美しい街を褒めちぎっていた。

 

笹川 上越市内の商店主からは、外国人と積極的に関わろうとする前向きな声が聞かれた。語りかけると翻訳が即座にできるスマートフォンのアプリがあり、実際に今回の聞き取りでも相手が取り出して使う場面があったが、同じ発音の言葉が異なる意味に変換され、大笑いして距離がぐっと縮まった。

 

黒島 大火からの復興が進む糸魚川駅周辺では、市民有志が国内外の人との交流や地場産野菜の飲食ができるスペース作りを計画している。夕食の時間帯以外でも、訪日客が楽しめる街になるといい。

糸魚川シーフードシャトルバスを利用し、カニなど海の幸を味わう外国人旅行客=2月6日、糸魚川市大町1

糸魚川シーフードシャトルバスを利用し、カニなど海の幸を味わう外国人旅行客=2019年2月6日、糸魚川市大町1

食と人情世界にアピール

糸魚川シーフードシャトルバス実行委員会幹事長・片山良博さん(43)

片山良博さん

 

-4年間の運行実績をどう見ますか。
  「お客が年々増え、これまでトラブルや大きな苦情もなかった。リピーターもおり、手応えを感じている」
  「最初は糸魚川青年会議所の企画だった。白馬で外国人客が急増していることは糸魚川でも話題で、外国人客で地域を盛り上げたいとの思いからだった。白馬からは『客を取られる』とみられるのではないかと心配したが、白馬は飲食店不足で、互いに利点があった」

 

-県境をまたぐ連携が図られています。
  「旅行客に県境は関係ない。日本のスキーリゾートを紹介する海外の展示会で、北海道は海の幸をアピールしている。長野県はそれができないが、『白馬の谷と糸魚川の海』としてアピールできる」
  「糸魚川は長野、富山の2県に接しており、地の利を生かさない手はない。国際線のある富山空港ももっと活用できる。上越地域全体で見れば、北陸新幹線で首都圏、北陸、どちらともつながっていることを生かした観光振興ができるはず。新幹線延伸で関西からの時間も縮まる。通年で観光を楽しめるルートとしてもっと可能性があると思う」

 

-リピーターも目立つようになってきました。
  「海の幸だけなく、糸魚川の人たちの歓迎の思いが伝わっていることもあると思う。『糸魚川の○○さんにまた会いたい』と思わせることができたら、また来てくれる。個人とのつながりは、よそでまねできない。飲食店の店内はもちろん、バスの乗降車時に市民に集まってもらって歓迎するのは、そのためだ」

 

-シャトルバスの今後の可能性をどう見ますか。
  「今後も訪日客数の増加が見込まれ、バス実行委としても海外でのアピール強化を考えたい。糸魚川大火から街が復興するためにも、『糸魚川の食が世界中の人を喜ばせている』という事実は市民の自信になる」

 

-4年間の運行実績をどう見ますか。
  「お客が年々増え、これまでトラブルや大きな苦情もなかった。リピーターもおり、手応えを感じている」
  「最初は糸魚川青年会議所の企画だった。白馬で外国人客が急増していることは糸魚川でも話題で、外国人客で地域を盛り上げたいとの思いからだった。白馬からは『客を取られる』とみられるのではないかと心配したが、白馬は飲食店不足で、互いに利点があった」

 

-県境をまたぐ連携が図られています。
  「旅行客に県境は関係ない。日本のスキーリゾートを紹介する海外の展示会で、北海道は海の幸をアピールしている。長野県はそれができないが、『白馬の谷と糸魚川の海』としてアピールできる」
  「糸魚川は長野、富山の2県に接しており、地の利を生かさない手はない。国際線のある富山空港ももっと活用できる。上越地域全体で見れば、北陸新幹線で首都圏、北陸、どちらともつながっていることを生かした観光振興ができるはず。新幹線延伸で関西からの時間も縮まる。通年で観光を楽しめるルートとしてもっと可能性があると思う」

 

-リピーターも目立つようになってきました。
  「海の幸だけなく、糸魚川の人たちの歓迎の思いが伝わっていることもあると思う。『糸魚川の○○さんにまた会いたい』と思わせることができたら、また来てくれる。個人とのつながりは、よそでまねできない。飲食店の店内はもちろん、バスの乗降車時に市民に集まってもらって歓迎するのは、そのためだ」

 

-シャトルバスの今後の可能性をどう見ますか。
  「今後も訪日客数の増加が見込まれ、バス実行委としても海外でのアピール強化を考えたい。糸魚川大火から街が復興するためにも、『糸魚川の食が世界中の人を喜ばせている』という事実は市民の自信になる」

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