第1弾 上越地域

Yes,We LOVE! 訪日外国人に聞く

<3> もてなす側も国籍多彩

冬の赤倉に新業態続々

新潟日報 2019/03/02

 スキーやスノーボードを目的に妙高市の赤倉温泉周辺を訪れる外国人客が増えたことで、地域の商売にも変化が訪れている。

 外国人があふれ、まるで外国にいるのではないかと錯覚する街中には、オーナーや店員が外国人という店も少なくない。

 多くの飲食店が軒を連ねる赤倉中央通り。グアム島から家族で訪れたミンディー・ウィルソンさん(39)はスノーボードの後、街の散策を楽しんでいた。「赤倉にスキーのレンタルショップを営んでいる友人がいるの。赤倉は2回目だよ」と人懐こい笑みを浮かべた。

 空き店舗が並んでいた赤倉中央通りが、ここ3年ほどは、冬期間に外国人が経営する飲食店などがテナントに入り、活況を呈している。

 こうした外国人を相手に新たなビジネスを展開する人も現れた。通りの一角にあるスキー、スノーボード教室や個人レッスンを行う「myoko snowports.」は、「もてなし」を重視したスキーガイドを派遣している。併設するカフェも外国人に人気だ。

オフィスに併設するカフェで客と談笑する「myoko snowports.」のラングトリー望さん(右)=妙高市赤倉

オフィスに併設するカフェで客と談笑する「myoko snowports.」のラングトリー望さん(右)=妙高市赤倉

 同社は2009年、東京生まれのラングトリー望さん(42)が、オーストラリア人の夫と設立した。訪日外国人の増加を見越して赤倉に進出した先駆け的存在だ。客も、約100人いるスタッフも、ほとんどが外国人。スタッフの国籍はオーストラリアやスウェーデンなど13カ国と多岐にわたる。

 スキーガイドは、スノースポーツを楽しむ人に付いて案内をするガイドのことで、外国では初心者、上級者問わずにガイドと滑り、楽しむ文化が根付いているという。

 「うちのスタッフはガイドというよりコンシェルジュ」と望さん。スタッフはスキーやスノーボードの指導だけでなく、観光地を案内したり、飲食を共にしたりする。

 誕生日の客をサプライズで祝うこともある。望さんは「お客さまには思い出を持って帰っていただきたい、というのが当社の理念。雪だけでなく人を求めて来る人が増えれば、外国人の訪日はブームで終わらない」と力を込める。

 利用者は年々増え、昨シーズンは約5000人。そのほとんどが数日間利用するため、延べ客数は数万人になる。利用客のほとんどは赤倉温泉に宿泊するため、地域への波及効果は大きい。「宿がなければお客さまを呼べない」と感謝する。

 妙高から、空港や外国人に人気の周辺スポットなどへバスを運行する事業者もいる。

 貸し切りバス事業の妙高ハブネットは今季、赤倉温泉から約40キロの長野県・地獄谷野猿公苑への運行を本格的に始めた。温泉に入るサル「スノーモンキー」は赤倉の訪日客にも人気だ。

 悪天候などでスキー場に行かない外国人が多い日は40人ほど乗り込む。「スキー目的で来ても、近くに観光地があれば行きたいと思う外国人は多い、と改めて分かった」と杉木修一社長は手応えを語る。

 同社は昨季、成田空港-妙高高原駅前を結ぶシャトルバスを運行した。今季は同駅と富山空港、新潟空港を結ぶ便の運行も始めた。富山、新潟各空港便は、妙高市のロッテアライリゾートを経由する。杉木社長によると、中国や台湾、韓国から赤倉温泉周辺を訪れる外国人は、羽田や成田空港ではなく、富山、新潟空港の利用にシフトしつつあるという。

 杉木社長は、主に台湾からの客をターゲットに、富山空港便の通年運行を予定している。富山県の立山アルペンルートと赤倉温泉といった県をまたいだコースの旅行商品を売り込む考え。「本県の見どころを組み合わせたいが、知名度が低い」としながらも、「赤倉の冬場の活況を通年に広げるため、地域に貢献したい」と力を込めた。

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