第1弾 上越地域

Yes,We LOVE! 訪日外国人に聞く

<4> 伸びしろ大きい商店街

決済や交通に改善点も

新潟日報 2019/03/05

 上越地域で急増する訪日客を狙い、スキー場のエリアから少し離れた商店街も動きだした。

 妙高市の新井商工会議所は今季、赤倉温泉やロッテアライリゾートの滞在客に向け、新井駅や北新井駅周辺など22店を載せた訪日客向けの英語マップを1万部作った。店側には接客時に使える「指さし会話シート」を配布。同商議所専務理事の池田弘さん(66)は「客足が増えるなど、効果が早くも見えてきた。腰を据えて訪日客誘致に取り組む」と意気込む。

 赤倉から約30キロ離れた上越市の高田本町商店街では、4年前に店を切り盛りするおかみさんたちでグループを結成し、訪日客への情報発信やサービスに力を入れてきた。

 「うちの店にも、外国人がポツポツ来るようになって」。メンバーの1人で、茶葉や茶道具などを販売する「お茶の小酒井園」(本町4)の小酒井節子さん(59)は「抹茶をたてて味わう体験が喜ばれている。お土産用にティーバッグを買い求める方も増えてきた」と感触を語る。

 今冬は店先にペンとノートを置いたところ、カナダやオーストラリアから訪れた夫婦らが早速、英語で感謝の言葉をつづった。「片言の単語と身ぶりでも意外と大丈夫ね」と笑う。

ほろ酔いで赤倉中央通りを歩くジェームズ・トムさん(右)とジムさん親子。花見や相撲など日本文化にも強い関心を寄せていた=2月1日、妙高市赤倉

ほろ酔いで赤倉中央通りを歩くジェームズ・トムさん(右)とジムさん親子。花見や相撲など日本文化にも強い関心を寄せていた=2月1日、妙高市赤倉

 新潟日報社が2月に実施した訪日客50人余への聞き取りで、スキーやスノーボードに次ぐ楽しみとして挙がったのが、「文化」や「食」。実際、すし店や居酒屋、温泉、道の駅、水族館など、さまざまな場所に足を運んでいた。

 「温泉、マグロ(の刺し身)、しゃぶしゃぶ...。どれも、おいしかったわ。出会う日本人もみんな親切」。ロッテに滞在していたオーストラリア人のキム・ピーコックさん(60)は、夫のデービッドさん(63)との楽しいひとときを振り返る。

 ただ、外国人からは交通網の分かりづらさや便数の少なさ、決済の不便さに不満も漏れた。妙高から高田本町商店街にやって来たシンガポールの30代男性は「ちょうどいいバスや電車がない。特に赤倉温泉から高田は不便」と打ち明けた。

 海外では少額でもクレジットカードや電子決済が当たり前になっているため、利用できない店が多い日本の商店街に「戸惑った」「不便」との声も目立った。

 上越地域の訪日客や外国人経営者らの支援をしている上越市のNPO法人「謙信の郷」理事の長尾早苗さん(51)は「商店街ほど伸びしろが大きい」と指摘する。「訪日客はスマートフォンで情報を得る。店側もそれを念頭に情報を示した方がいい。写真入りメニューやQRコードを用意するなど、手間を掛けた分だけお客は増える」

 「スノーボードも楽しいけど、次は桜を見たい」。日本通の父、ジム・トムさん(69)に誘われ家族で初来日し、妙高に滞在したオーストラリア人のジェームズさん(29)は、次は花見スポットがある東京を目指すという。約4000本の桜で「日本三大夜桜」の一つに数えられる高田公園(上越市)のことは「全く知らなかった」と言い、満開時の画像に見入りながら「妙高から近い場所にこんなすてきな場所があるなんて、びっくり。絶対に行くよ」と驚いていた。

 訪日客には、ジェームズさんのように「冬以外にも訪れたい」とのニーズはあるものの、春から夏の上越地域を売り込もうという機運は乏しい。「ロッククライミングや海水浴、紅葉なども楽しめる地域だと、まだ多くの外国人は知らない。通年観光の可能性は無限にある」。長尾さんはこう強調する。

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