第6弾 柏崎・出雲崎・刈羽

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新潟日報 2021/07/09

[2] スポーツ合宿 刈羽の運動施設

充実の環境前面に誘致 全国の高校・大学生 照準

 夏の日差しを受けた刈羽村刈羽の複合施設「ぴあパークとうりんぼ」内の人工芝サッカー場。6メートル間隔で設置された散水装置から霧状の水が噴射され、芝が冷やされていく。

 6月下旬、練習していた長岡向陵高校サッカー部主将の男子高校生(17)=柏崎市=は、「プレーをしていても涼しい。芝もきれいで環境がいい」と話す。

 2面の人工芝ピッチがあるとうりんぼは昨年度、1面分の芝を張り替えた。これに合わせ、4670万円をかけ、熱中症対策を施した。芝に敷くチップも黒色から、熱を吸収しづらい黄土色に変えた。散水装置と黄土色チップを導入する施設は全国的にも少ない。

 とうりんぼには例年、7月中旬~8月末に関東の高校・大学を中心に約10団体400人が合宿に訪れる。熱中症対策は、日中の暑い時間に練習できない夏合宿の弱点をなくし、他地域と差別化を図る狙いがある。

 指定管理する「ピーチビレッジ刈羽」の布施弘樹・サッカー事業部マネージャー(47)は「関東のチームから新潟が意外と暑いと指摘されてきた。新機能で満足してもらいたい」と力を込める。

人工芝を冷やす散水システムなど最新鋭の熱中症対策が導入されたサッカー場=刈羽村刈羽のぴあパークとうりんぼ

 サッカー場、野球場、テニスコート、ドーム型のアリーナなどさまざまな運動施設がある刈羽村は、村を挙げてスポーツ合宿の誘致に動いている。

 村によると、とうりんぼが2012年10月にオープン後に力を入れ始め、1人1泊当たり2000円の合宿費補助制度を設けた。村産業政策課は「既存の施設を有効活用したい」と語る。

 刈羽村でしかできない体験を求め、一流選手が集まる合宿もある。

 刈羽中学校には県内で唯一、棒高跳びの屋内練習設備がある。冬休み中は毎年、全国大会に出場する中高大学生が合宿に訪れる。

 19年は村生涯学習センターラピカのアリーナに設備を運び、合宿を開催した。広く、暖房完備の好環境で宿泊は約50人、日帰りで約50人が訪れた。

 ラピカを指定管理するPVKの平田晋一さん(43)は「一流選手の合宿に魅力を感じて九州からも学生が来る。村だけのコンテンツを生かしたい」と意気込む。今後は規模を拡大し、合宿利用が落ち込む冬場の収入の柱にしたいという。

■      ■

 課題は観光資源に恵まれているとは言えない村で、いかに「お金」を落としてもらうかだ。

 村商工会は昨年度、スポーツ合宿を核に交流人口を増やすため、観光協議会を立ち上げた。宿泊業、農業など合宿に関係する業種の村内企業と、何を売り出すかを考えていく予定だ。

 協議会をとりまとめる商工会の吉田友信さん(65)は「手を打たないと、選手は宿と施設の往復だけになる。連携して地場産業を盛り上げたい」と話す。大会会場で農作物や加工品を販売することや、土産用の菓子の開発などを目指している。

 新型コロナウイルス禍で商工会と施設が注目しているのが、飲食などの消費が活発な「大人向け」のスポーツ合宿だ。

 ラピカは社会人サークルの誘致に力を入れ、とうりんぼも社会人を狙い、本年度から土日の夜間のサッカー場利用料を半額にした。

 吉田さんは「リピーターに甘えるだけではなく、新しい層に向けても何ができるか考えていきたい」と力を込める。

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