第6弾 柏崎・出雲崎・刈羽

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新潟日報 2021/07/10

[3] 柏崎の海

海水浴客頼み転換模索 キャンプ、BBQ誘客も

 新型コロナウイルスの影響で、昨シーズンは海水浴客が激減した柏崎市。入り込みの回復を願う観光関係者が7月4日、柏崎港観光交流センター「夕海ゆうみ」で今シーズンの海開きに臨んだ。

 桜井雅浩市長(59)は表情を引き締め、「柏崎は県内で最大の集客を誇る。ライフセーバーがいる柏崎の海は安心安全の海だ」と語った。

 柏崎市には約42キロの海岸線に県内最多の15カ所の海水浴場がある。中でも、西山町石地の石地海岸は遠浅の海と水質が売りで、県内屈指の入り込みを誇る。

 ここで旅館「さかえ茶屋」を営み、約60年にわたって客を迎えてきた齋木園江さん(72)=西山町鎌田=は「最盛期の1990年代は海水浴客で道路が大渋滞した。予約がいっぱいで宿泊を断ることもあった」と懐かしむ。

 市内の海水浴場のかつての活況を知る柏崎観光協会の堀敏昭会長(76)も「段ボールにお金が入り切らず、足で踏むほどの売り上げがあった」と振り返る。

海水浴客を待つ石地海岸。誘客に向けた新たな取り組みも出ている=柏崎市西山町石地(本社小型無人機から撮影)

 ただレジャーの多様化などを背景に本県の海水浴客は、減少傾向にある。

 県内最多の入り込みを誇る柏崎市も例外ではない。90年度の約178万人がピークで、その後は右肩下がり。2019年度は約57万人、ウイルス禍の20年度は約18万人と、ピーク時の10分の1程度にとどまった。

 石地海岸も同じ傾向だ。最盛期には浜茶屋などが20軒ほど営業していたが、今夏に営業するのは5軒ほどにまで減った。

 手をこまねいているばかりではない。さかえ茶屋の齋木さんは海開き前の6月、西山町地区の活性化に取り組む有志と協力し、旅館で雑貨などを販売するイベントを催した。

 「石地を知ってほしい。石地ファンを増やしたい」との思いだった。「海水浴だけではもう生き残れない」と盛り上げを図る。

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 行政も危機感を募らせる。その表れが、柏崎市が20年11月に策定した「観光ビジョン」だ。

 市の計画で初めて「海水浴を中心とする観光からの転換」を明記。海水浴だけに頼らない新たなスタイルを目指すことを鮮明にした。

 モデルケースの一つと位置付けるのが、キャンプとバーベキューの専用エリア「かしわざきセントラルビーチ」。市中心部に近いみなとまち海浜公園内に、市が20年8月に設けた。

 海水浴以外の魅力をつくり出すのが狙いで、土地を所有する県に対し、ビーチの有効活用や、市が管理を徹底することを訴え、許可を得た。ことしは3年の試行期間の2年目。昨年は3カ月で約1700人が利用した。

 ヤシの木を植えたり、管理事務所に米国の西海岸カリフォルニアのビーチをイメージした壁画を施したりして、誘客の工夫を重ねる。運営会社の社長、伊藤達栄さん(51)は「バーベキューなどのニーズに応える形となったのは画期的だ」と評価する。

 市はセントラルビーチのように、海辺に民間の投資や事業を呼び込んでいきたい考え。ただ、市内の観光関係者は「海の観光客が増えて、利益が出る見込みがないと企業は手を出さない。新型ウイルスもあり、簡単にはいかないだろう」と指摘する。

 柏崎観光協会の堀会長は「海と山など市の観光資源を組み合わせ、魅力をつくっていきたい」と新たなアイデアを思案する。海の活用策を模索する動きは始まったばかりだ。

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