第6弾 柏崎・出雲崎・刈羽

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新潟日報 2021/07/13

[4] 出雲崎の歴史

町並み生かす観光に力 空き家改修 施設を整備

 「ここは良寛の生家、橘屋の跡地です」。出雲崎町井鼻の観光ガイド、渡辺モトさん(77)は「出雲崎ふるさと語りべ」として伝統的な「妻入りの町並み」を案内する活動に携わっている。10年を超えるベテランだ。

 町内外の人と会話を交わし、「大好きな出雲崎の魅力を共有できる」と交流を楽しみにする。

 出雲崎は江戸時代、北前船の寄港地や北国街道の宿場町として栄えた。江戸期の禅僧で全国的にも有名な良寛の生誕地でもある。

 旧北国街道を中心とした4キロほどの観光コースには、寺や代官所の跡地など約30カ所の名所が点在する。渡辺さんは「町にはさまざまな歴史がある。案内する場所は多い」と語る。

 ガイドには現在9人が登録している。小林則幸町長(87)は「町民自身が観光に関わることで町民が町に誇りを持つようになる」と期待する。

出雲崎の歴史や町並みについて語る観光ガイドの渡辺モトさん=出雲崎町尼瀬

 町は妻入りの町並みを生かした観光にも力を入れる。旧街道沿いには町家を改修し、歴史や文化を紹介する新たな施設が相次いでできた。2019年10月に「歴史や五郎兵衛」(羽黒町)、21年5月に「出雲崎寄港地の町家」(尼瀬)がオープン。海岸地域の観光スポットになっている。

 渡辺さんは「今までは跡地の案内が中心だったが、施設ができて実際に町家の造りを案内できるようになった」と歓迎する。

 先人の営みを体感できるようにも工夫する。例えば冷蔵庫として使われていた雪室(ゆきむろ)のふたを開けて紹介し、当時の暮らしを知ってもらう。

 いずれの施設も空き家を活用したまちづくり計画の一環で、町に寄付された空き家を改修した。小林町長は「『妻入りの町並み』を歩いてもらうきっかけもできた」と空き家対策と観光の両面での効果を狙う。

 ハード面の整備が進む一方で、町観光協会の小林等会長(71)は観光に対する町民の意識改革が課題と捉えている。

 町によると、町内の商店数は年々減っている。1994年は145店だったが、直近の調査の2016年は56店と約6割減った。

 観光協会が、街歩きにつながるスタンプラリーのイベントを企画した際には、商店主から「出店してまで稼がなくていい」と消極的な反応があったという。

 小林会長は「観光地として町を盛り上げるために、商店や町民が一体となって頑張らなければならない」と感じている。

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 そうした中、小林会長が注目する取り組みがある。

 町と町民が一緒に活動内容を話し合い、ことし5月に発足した「良寛記念館応援倶楽部くらぶてまりの会」だ。

 町の観光施設で1965年にオープンした「良寛記念館」の活性化を目指している。一般会員は7月2日時点で155人にまで増えた。

 会員のうち、半分以上の85人は町民だ。佐藤亨会長(78)は会の発足で良寛に対する関心と敬愛の念の高まりを感じている。

 記念館によると、30年ほど前のピーク時には年間約10万人が訪れた時期もあったが、近年は約1万人にとどまる。

 てまりの会では少しでも会員を増やし、多くの人に足を運んでもらおうと呼び掛ける。「良寛さま」と呼んで敬愛する佐藤会長は「謙虚な生き方と純粋な精神を継承していきたい。世に良寛さまの思いを伝える記念館を盛り上げ、町の活性化に貢献したい」と話す。

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