第3弾 長岡・見附・小千谷

[未来のチカラ in 長岡・見附・小千谷]

中澤卓也さんと着て見て巡る

<2> 小千谷編

紅白に出たら「紅白」飼ってみたい

和服姿で錦鯉を観賞 小型化品種にも好奇心

新潟日報 2020/08/26

 錦鯉発祥の地であり、麻織物・小千谷縮の産地である小千谷市。初めて小千谷縮に身を包んだ中澤卓也さんは、錦鯉の優雅な姿に心を動かされ、機織り体験や多彩な商品を通じて産地の魅力を体感した。

第一ニットの工場を見学する中澤卓也さん(左)。縫製作業のスムーズな流れに感心していた=見附市柳橋町

錦鯉に餌をやる中澤卓也さん。色や模様の美しさに見とれていた=小千谷市城内1の錦鯉の里

 赤や白、黒の模様が体に浮かび「泳ぐ宝石」と称される錦鯉。その歴史をたどろうと、中澤さんは観光施設「錦鯉の里」(城内1)に足を運んだ。日本庭園と屋内の観賞池があり、合わせて約330匹が優雅に泳ぐ姿を楽しめる。大きいもので1メートルを超えるという。

 早速、観賞池で泳ぐ多くの錦鯉を目の当たりにし「大きい、でかい、すごい」と興奮気味。餌やりも体験し、口をパクパクさせながら寄ってくる錦鯉を見て「小学生の頃、よくハイブ長岡の池で錦鯉に餌をやったなあ」と思い起こした。

 同館飼育担当の星野哲雄さん(70)が錦鯉の起源を紹介した。江戸時代後期、かつて二十村郷と呼ばれた小千谷市東山地区などの山あいで生まれた。食用として飼われていたマゴイに、突然変異で鮮やかな色が現れたとされる。

 星野さんが「昔の人が交配を繰り返し、大切に受け継いできた」と伝えると、中澤さんは「そこに始まりがあったのか」とうなずいた。

 錦鯉には、飼育する場所の広さによって体長を変化させる特性がある。一般住宅で広々とした池を設けにくくなったことから、産地は室内で観賞できる小型の錦鯉の販売に力を入れる。

 館内には、3歳なのに体長が5センチほどしかない錦鯉たちの泳ぐ水槽も。錦鯉といえば大きいイメージを持っていた中澤さんは「こんなに小さな錦鯉がいるなんて、初めて知った」と驚いていた。

 さまざまな模様の錦鯉が悠々と泳ぐ様子を眺めながら、突然「いいね」と声を上げた。視線の先には、白地に赤の鮮やかな色を輝かせる品種「紅白」の勇姿。「NHK紅白歌合戦への出場を目指していますからね。実現したあかつきには、この紅白を飼ってみたい」と、自身の願いを重ね合わせた。

伝統の技機織りに挑戦

 錦鯉を観賞した際、中澤さんが着ていたのは伝統の麻織物の小千谷縮。「他の着物と軽さが全然違う。肌触りがとても良くて涼しい」。製造工程に興味を抱き、機織り作業を体験しようと、市総合産業会館サンプラザ(城内1)にある小千谷織物工房「織之座おりのざ」を訪れた。

 原料となる植物の苧麻ちょまから繊維を取り出して糸をんだり、生地の色を白くするため雪にさらしたりする工程をスタッフが紹介。よこ糸に強いよりをかけることで「しぼ」といわれる凹凸が生まれ、独特の着心地をもたらすと伝えると、「これがひんやり感につながるんですね」と納得していた。

 糸に模様を付ける「かすり作り」の工程を学んだ後、模様が生地に浮かぶ仕組みを体験できる「絣織り」に挑戦。たて糸に緯糸を通して打ち込む作業に夢中になっていると、次第に錦鯉の模様が現れた。「なるほど。昔の人はよく考えたなあ」と感嘆の声を上げた。

 1反の織物には約3万回も打ち込みを繰り返す。驚きながらも、作業が板に付いてきたからか「家に織機があったら一日中、無心でできそうだ」と語った。

機織りを体験。伝統の作業に夢中になった=サンプラザ内の織之座

機織りを体験。伝統の作業に夢中になった=サンプラザ内の織之座

小千谷縮商品に親近感

小千谷織物工房のショップを見学。小千谷縮で作られる商品の多さを知った=サンプラザ内の匠之座

小千谷織物工房のショップを見学。小千谷縮で作られる商品の多さを知った=サンプラザ内の匠之座

 同じサンプラザ内の工房のショップ「匠之座たくみのざ」には、小千谷縮を使った洋服や小物などが並んでいる。現代の暮らしに合った商品をそろえ、小千谷縮を幅広く使ってもらいたいという産地の提案だ。

 中澤さんはシャツやジャケット、名刺入れ、最近人気だという縮のマスクを手に取った。「若い人もおしゃれに使えて格好いい。実際に着て、たくさんの商品を目の当たりにして、小千谷縮がとても身近に感じられた」と話していた。

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