南魚沼市の八海醸造には酒を作る三つの蔵がある。最も古いのが、前社長の南雲和雄さん=故人=が1964(昭和39)年に建設し、自身の名前の一文字を入れて名付けた「
5年前に最新設備を導入した浩和蔵で「より良い酒を多くの人に届けたい」と語る南雲二郎社長=南魚沼市長森
和雄さんが社長に就いた60年頃、年間生産量はわずか54キロリットル。一升瓶に換算すると約3万本の小さな蔵だった。「父の時代は、本当に酒が売れなかった」と二郎さんは振り返る。
和雄さんと妻の
そんな中で、生産規模360キロリットルの浩和蔵を建設。会社の売り上げに比べ過大とも言える設備だったが、より大きな酒蔵になることを目指した。時代が平成に入ると、地酒ブームにも乗り生産量は拡大。今では当時の100倍以上の規模になった。
八海醸造の多彩な銘柄
「灘や伏見にある全国規模の蔵は、量産化に伴い酒の質を落とした。その
毎日使う自動車や電化製品は、その性能を上げることで企業の存在価値を高めてきたとして、二郎さんは「晩酌に飲む酒も日常品。だからこそ高品質なものを作り、届ける責務がある」と語る。
常に目指してきたのは、バランスが良く、食を引き立てて飲み飽きしない淡麗な味の食中酒だ。「杯を重ねるうちに、うまさに気付くような酒がいい。だって、酒は人と人をつなぐツールなのだから」と二郎さんは笑みを浮かべた。
(長岡支社・藤井直人)
八海醸造 創業1922(大正11)年。南雲二郎社長。主な銘柄は清酒「八海山」。焼酎「よろしく