第2弾 魚沼

魚沼 酒人考

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<3> 八海醸造(南魚沼市)
南雲 二郎社長(60)

杯重ねて気付くうまさを 極めた味 多くの人に

新潟日報 2019/09/14

 南魚沼市の八海醸造には酒を作る三つの蔵がある。最も古いのが、前社長の南雲和雄さん=故人=が1964(昭和39)年に建設し、自身の名前の一文字を入れて名付けた「浩和こうわ蔵」だ。現在は最高品質の大吟醸クラスなどを製造し、現社長の南雲二郎さん(60)は「わが社の核心施設」と評す。

「5年前に最新設備を導入した浩和蔵で「より良い酒を多くの人に届けたい」と語る南雲二郎社長=南魚沼市長森

5年前に最新設備を導入した浩和蔵で「より良い酒を多くの人に届けたい」と語る南雲二郎社長=南魚沼市長森

 和雄さんが社長に就いた60年頃、年間生産量はわずか54キロリットル。一升瓶に換算すると約3万本の小さな蔵だった。「父の時代は、本当に酒が売れなかった」と二郎さんは振り返る。

 和雄さんと妻のあいさん(88)、社員の計5人が中心となって蔵を経営。得意先を料理屋で接待する代わりに、仁さん自身が山菜や野菜など地元の食材を使った手料理でもてなし、蔵をもり立てた。

 そんな中で、生産規模360キロリットルの浩和蔵を建設。会社の売り上げに比べ過大とも言える設備だったが、より大きな酒蔵になることを目指した。時代が平成に入ると、地酒ブームにも乗り生産量は拡大。今では当時の100倍以上の規模になった。

八海醸造の多彩な銘柄

八海醸造の多彩な銘柄

 「灘や伏見にある全国規模の蔵は、量産化に伴い酒の質を落とした。そのてつは踏まない」と、97年から社長を務める二郎さん。「良い酒を、より多くの人に」という理念を掲げ、浩和蔵で最高品質の酒作りのノウハウを培い、価格が安い本醸造酒などの製造にも生かしてきた。

 毎日使う自動車や電化製品は、その性能を上げることで企業の存在価値を高めてきたとして、二郎さんは「晩酌に飲む酒も日常品。だからこそ高品質なものを作り、届ける責務がある」と語る。

 常に目指してきたのは、バランスが良く、食を引き立てて飲み飽きしない淡麗な味の食中酒だ。「杯を重ねるうちに、うまさに気付くような酒がいい。だって、酒は人と人をつなぐツールなのだから」と二郎さんは笑みを浮かべた。

 (長岡支社・藤井直人)

八海醸造 創業1922(大正11)年。南雲二郎社長。主な銘柄は清酒「八海山」。焼酎「よろしく千萬せんまんあるべし」、ライディーンビール、「こうじだけでつくったあまさけ」も製造する。南魚沼市長森1051。025-775-3121。

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