第2弾 魚沼

魚沼 酒人考

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<6> 合同会社「まんま」(十日町市)
柳 一成社長(53)

湯治豚 軽めの脂に杯進む 温泉熱でうまみ凝縮

新潟日報 2019/09/21

 十日町市の松之山温泉にある、旅館「ひなの宿 ちとせ」。社長の柳一成さん(53)が玄関脇に引いた源泉の湯だまりに、真空パックされた豚肉の塊を浸していた。63~68度の湯に浸すこと3時間。ピンク色に火照ったような「湯治豚」が出来上がった。

 脂は軽めで上品な味。「香りが豊かな純米酒や吟醸酒にとても合う」と柳さんは語る。

湯治豚は地域の誇りの温泉から生まれた逸品と語る柳さん=十日町市松之山温泉湯本

湯治豚は地域の誇りの温泉から生まれた逸品と語る柳さん=十日町市松之山温泉湯本

 材料に、十日町市と津南町の養豚業者が育てるブランド豚「妻有ポーク」を使う。温泉熱を使い低温調理することで、脂身のまろやかな甘さとジューシーなうまみが肉の内部に凝縮する。「湯治豚」の名前は温泉に漬かり湯治をするような姿から取った。

 柳さんは、湯治豚を開発した合同会社「まんま」の代表も務める。松之山温泉の活性化を目指して2008年、旅館や飲食店経営者らが共同出資し設立した。

 まんまは「地元の宝」の温泉の活用を進めてきた。食でも、温泉を使って雪国らしい特産を作ろうと企画。著名ホテルの料理人などから助言を受けた。そこで思いついたのは、温泉熱を利用した低温調理方法だ。試行錯誤を重ね12年、湯治豚がデビューした。

温泉に浸かり美しいピンク色に染まった湯治豚

温泉に浸かり美しいピンク色に染まった湯治豚

 「温泉と地元ブランド豚のコラボレーション。まさに松之山温泉らしい郷土食です」と胸を張る。

 ちとせでは、夕食にローストポークとして、昼食でも豚重定食としても提供する。温泉街では、夕食のメインを飾る一皿とし提供する旅館も多く、宿泊客に好評だという。

 まんまは旅行商品や、温泉水を使った化粧水も開発した。

 また温泉の余熱利用による道路融雪も市と協力し実現した。冬には3メートルを超す雪に閉ざされる松之山温泉。だが地下水に乏しく消雪パイプの設置は困難だったからだ。さらに温泉街らしい景観を整備するなど地元一丸となった活動が続く。

 柳さんは「湯治豚は温泉という大地の恵みから生まれた。松之山温泉の誇り。雪国の奥座敷へ、ぜひ味わいに来てほしい」と話していた。

おわり

 (長岡支社・藤井直人)

合同会社「まんま」 2008年設立。柳一成代表。湯治豚は、松之山温泉の旅館や飲食店計5カ所で提供している。問い合わせは、松之山温泉里山ビジターセンター、025-595-8588。

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