第2弾 魚沼

魚沼 酒人考

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<4> 白瀧酒造(湯沢町)
高橋 晋太郎社長(41)

“ご法度”破り時流に乗る 味も見た目も斬新に

新潟日報 2019/09/18

 湯沢町で唯一の酒蔵が白瀧酒造だ。その主力銘柄は来年で30周年を迎える「上善如水じょうぜんみずのごとし」。バブル景気に沸いた時代、斬新さを前面に出した挑戦的な銘柄だった。

「水のようにピュアな姿勢で酒造りをしている」と語る高橋晋太郎社長=湯沢町湯沢

「水のようにピュアな姿勢で酒造りをしている」と語る高橋晋太郎社長=湯沢町湯沢

 白瀧酒造は元々、湯沢町と県境を挟んだ群馬県の一部で飲まれていた、地元の酒蔵だった。銘柄は今も残る「白瀧」だった。

 だが、バブルの時代、越後湯沢駅に多くのスキー客が詰めかけた。この需要を取り込もうと1990年、見た目も名前も斬新で、土産物にもなる酒、「上善如水」を発売した。

 きれいな水をイメージした無色透明な瓶は、紫外線で酒が変色するのを嫌う清酒業界では“ご法度”だ。変色防止に一本ずつ化粧箱に入れて販売した。ラベルの字は清酒で一般的な「ひげ文字」などは使わず、ワープロ文字を採用した。

 当時、業界内から「売れっこない」と散々にこき下ろされたという。「酒販売店の商品紹介の宣伝文句に『本当の酒好きの方は、白瀧がお勧め』とまで書かれていたと父から聞かされた」と高橋晋太郎社長(41)は振り返る。

 ところが、新潟の地酒ブームも追い風となり、若者を中心にスキーヤーが土産として次々と買い求めた。

 一見、時代の波に乗ったようにみえるヒット。だがその裏には、長年蓄積した技術の裏打ちがある。ワインブームの当時、白ワインをイメージした軽い飲み口で、香り立つ、味わい深い今までにない酒としてつくり上げた。

 発売前、同社の年間生産量は900キロリットル。これが数年で5倍に跳ね上がった。

「上善如水」などの主力銘柄

「上善如水」などの主力銘柄

 主力銘柄となった「上善如水」は、現在は20種類以上のラインアップを誇る。「12ヶ月の上善如水」と名付け、月ごとに異なる味とラベルを施した商品も人気だ。

 商品名の「上善如水」の由来は、中国の老子が説いた最上の生き方は水のようにあるという言葉から来ている。高橋社長は「柔軟でしなやかに、水のようにピュアな姿勢で酒造りに取り組む。わが社の理念です」と力を込めた。

 (長岡支社・藤井直人)

白瀧酒造 創業1855(安政2)年。高橋晋太郎社長。主力銘柄は「上善如水」「湊屋藤助」「魚沼」など。湯沢町湯沢2640。025-784-3443。

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