第5弾 県央

ものづくりのキセキ
新潟日報 2021/05/26

第6回 「あるく」

 ラジオパーソナリティーの遠藤麻理さんが県央地域を巡ったシリーズ「エンマリ にんまり 街ぶらり」。まちの発展を支える伝統の職人技や、地域に新風を吹き込んだものづくりの現場を体感した。今回は「ものづくりのキセキ」の特別編として、アナウンサーを志した遠藤さんの四半世紀の軌跡の原点であるJR弥彦駅観光駅長の思い出を紹介。語録や動画も交えて、「麻理さんぽ」を一挙に振り返る。

温かな触れ合い 心の糧に

遠藤麻理さん 人生の「始発駅」訪ねて

 弥彦公園脇に延びる坂道を下ると、神社の社殿を模した瓦ぶきの駅舎が見えてくる。遠藤さんが1995年から1年間、観光駅長を務めたJR弥彦駅だ。当時は出身地の巻町(現新潟市西蒲区)から毎日通い、切符にはんこを押す改札業務をこなした。

 駅の中をのぞき込んだ遠藤さんは、ICカード「Suica(スイカ)」の自動改札機を見て「さみしい」とぽつり。到着した電車も、かつて「弥彦色」と呼ばれて親しまれた黄色と白の車両ではなかった。

 駅長になったのは21歳の頃。アナウンサーを夢見て進学で東京に出たが、帰郷後、希望の仕事はなかなか見つからない。そんな折、まちの情報誌で駅長募集の記事を見つけて応募した。「給料が良かったからです。ボーナスもあったし」

 主な仕事は改札業務のほか、桜の時季や菊祭りなどのイベントに合わせての観光案内。「キセル行為がないかどうかのチェックを一番頑張りました」。職務に心血を注いだと振り返る。

 楽しみは地元の人たちとの触れ合いだった。つらいことがあると頼った観光案内所のおばさん、酒を片手に戦争の話をしてくれた弥彦山の常連登山客のおじいちゃん、杯を酌み交わした観光協会の人たち...。「飲んでばっかりいましたね」

 駅の利用客だった書家から、名前にちなんで「麻のように強く優しく」「ことわりのように清く美しく」と書かれた短冊をもらったこともある。「まり」は、顔が丸いからと祖父が付けた。でも、「もらった言葉のように生きようと思いました」。短冊は仏壇の脇に大事に飾ってあるという。

 弥彦神社の宮司からは、神事の神楽を披露する際のナレーション役を任された。遠藤さんの夢を知っての粋な計らいで、当時のことを覚えている村民も多い。

 駅長を務めたことをきっかけに始まった縁は、その後の仕事にもつながっていったという。遠藤さんのキャリアのスタート地点である弥彦の地。「私にとって特別な場所。村全体が私のパワースポットです」

観光駅長を務めていた頃の思い出を語る遠藤麻理さん=弥彦村弥彦のJR弥彦駅前

観光駅長を務めていた頃の思い出を語る遠藤麻理さん=弥彦村弥彦のJR弥彦駅前

遠藤さんの観光駅長就任を取り上げた本紙記事。初々しい笑顔がまぶしい(1995年5月2日掲載)

遠藤さんの観光駅長就任を取り上げた本紙記事。初々しい笑顔がまぶしい(1995年5月2日掲載)

玉川堂

 銅板を打ち起こして作る鎚起ついき銅器の工房で、伝統の職人技を見学。年季の入った道具の数々や、電球が普及する前に作られた大きな明かり取り窓も歴史を物語る=燕市中央通2の玉川堂

銅板を打ち起こして作る鎚起(ついき)銅器の工房で、伝統の職人技を見学。年季の入った道具の数々や、電球が普及する前に作られた大きな明かり取り窓も歴史を物語る=燕市中央通2の玉川堂

三条鍛冶道場

 くぎを打ち延ばしてペーパーナイフを作り、鍛冶の世界を体験した遠藤さん。刃の部分が真っすぐにならず、思わず「根性が曲がっているのかな...」=三条市元町の三条鍛冶道場

くぎを打ち延ばしてペーパーナイフを作り、鍛冶の世界を体験した遠藤さん。刃の部分が真っすぐにならず、思わず「根性が曲がっているのかな...」=三条市元町の三条鍛冶道場

G.F.G.S.

 横じま柄のカットソーを完全受注生産するアパレルメーカー「G.F.G.S.」の工場。生産拠点を置く全長約1キロの商店街を「加茂の魅力」と位置付け、近隣工場と協業する=加茂市本町

横じま柄のカットソーを完全受注生産するアパレルメーカー「G.F.G.S.」の工場。生産拠点を置く全長約1キロの商店街を「加茂の魅力」と位置付け、近隣工場と協業する=加茂市本町

道の駅たがみ

 町特産のタケノコや梅の加工品、野菜などが並ぶ「道の駅たがみ」。町外からの買い物客だけでなく、近所に住む人が憩えるよう食堂スペースを設置。「たがみポーク」など地元食材を使ったメニューを提供する=田上町原ケ崎新田

町特産のタケノコや梅の加工品、野菜などが並ぶ「道の駅たがみ」。町外からの買い物客だけでなく、近所に住む人が憩えるよう食堂スペースを設置。「たがみポーク」など地元食材を使ったメニューを提供する=田上町原ケ崎新田

弥彦・湯神社

 弥彦神社の末社・湯神社を参拝し、おみくじを引いた遠藤さん。弥彦神社で、かつて恋人と2人で一つのおみくじを引いたところ「良縁ではない」と書いてあったという思い出も披露してくれた=弥彦村弥彦の湯神社

弥彦神社の末社・湯神社を参拝し、おみくじを引いた遠藤さん。弥彦神社で、かつて恋人と2人で一つのおみくじを引いたところ「良縁ではない」と書いてあったという思い出も披露してくれた=弥彦村弥彦の湯神社
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▶ 動画はこちらで見ることができます。 【エンマリ・にんまり・街ぶらり】

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