「未来のチカラin県央」の提言フォーラムが5月10日、燕市文化会館で開かれる。ものづくりが盛んな地域の未来の提言者として登壇する、8人の「明日(あした)創り人」を紹介し、それぞれから県央のお気に入りを教えてもらう。
「弥彦には安心感と人情味がある。ゆったりとした時間が流れているのも魅力です」。弥彦村で320年続く老舗旅館「四季の宿みのや」の17代目、白崎純也さん(48)は話す。宿のみならず温泉街全体の活性化に尽力し、観光客層を中高齢者から若者にも広げてきた。
千葉県で生まれ、小学校低学年の頃に父の故郷の弥彦村に引っ越した。高校卒業後は大手タイヤメーカーに就職。埼玉県大宮市(現さいたま市)で5年間過ごし、1996年に実家を継ぐためみのやに入社した。
入社後直面したのは、バブル崩壊の影響や社会情勢の変化だった。企業の慰安旅行などの団体客が減り、個人客が増える中で時勢に合ったサービス強化と宿のIT化を進めた。2000年に公式サイトを立ち上げ、インターネット予約を導入。05、06年には大正時代を思わせる客室「浪漫館」をオープンした。
「街づくりの秘訣(ひけつ)は私自身が楽しめること。自分のテンションが上がらないと続かないから」と話す白崎純也さん=弥彦村弥彦
一方で、温泉街全体に目を向けて気付いたのは、若い観光客の少なさだった。「中高齢者が多く、弥彦観光の未来を考えると今まで通りのやり方で大丈夫か」と疑問を感じた。「県外者は『弥彦=神社』の印象が強い。弥彦に温泉があると知らない人も少なくなかった」。呼び込み策としてたどり着いた答えは「パワースポット」としての弥彦神社だった。
旅館組合でプロジェクトを立ち上げ、地元ボランティアガイドから神社について学んだ。今では有名になった火の玉石(重軽石)にもスポットを当て、パンフレットで紹介。飲食店などとも連携し、パワースポットにちなんだ商品の販売も展開した。メディアにも取り上げられ、若者が訪れる観光地に生まれ変わった。
新たなアイデアも次々に打ち出した。昨年には客室を衣装部屋として利用してもらう「コスプレプラン」や、一定料金で温泉に入り放題のサブスクリプションを始め、人気を集める。「幼い頃、村には駄菓子屋やテーブルゲーム、喫茶店などがあって活気があった。時代に合わせて、住民も楽しめる村になればいい」と夢を巡らせる。
人口減や若者流出、人手不足に悩む県央地域、弥彦村の未来を見据えて思うのは「観光」の可能性だ。「観光に来た若者が地域に親しんでくれれば、UIJターンやリタイア後の移住にもつながる。地域課題解決の鍵になり得る」と考える。「弥彦山は新潟市民にとって、学校の校歌にも登場する『心の古里』でもあると聞く。下越の人はもちろん、県民、県外人、外国人も楽しく住める地域になっていってほしい」と願っている。
白崎さんが薦める地元グルメは、弥彦神社の一の鳥居前にある「旅館 清水屋」のカレーうどんだ。会社員時代、2日で4食カレーを食べたほどカレー好きの白崎さんは「10日に1回は食べに来る」という。
見附市出身のスパイス料理研究家、一条もんこさんと旅館組合有志が開発したルーは和風だしベースで、老若男女が楽しめる。「何が入っているか教えてもらえない魔法の粉」(白崎さん)を振りかけると、味に奥深さが増す。1杯890円(税込み)。1日限定5食。
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