[未来のチカラ in 県央]
「作りたいものがある人たちが気軽に集まり、さまざまなアイデアを出して形にしていく。ここは、ものづくりの出発点」。三条市のJR帯織駅前にある「EkiLab(エキラボ)帯織」代表の斎藤和也さん(33)は話す。
エキラボ帯織は、三条燕地域の若手有志が集まり、昨年10月に開業した。ものづくりに縁のない人も会員になれば、3Dプリンターなどの工作機械を自由に使える。「テーブルが作りたい」という場合は、常駐するスタッフが相談に乗り、地元メーカーへの橋渡しも行う。開業から半年、会員は330人を超えた。
「ものづくりへ興味を持つ人の裾野を広げ、地元メーカーの技術と結びつけたかった」と斎藤さんは狙いを話す。しかし、この業界に入った時は「そんなことは考えもしなかった」とも。
三条市出身で高校卒業後、家業で金属プレス加工などを手掛けるストカ(同市)に入社した。「大学に入っても結局はここに就職するから」と、当時の思いを振り返る。
東京で大学生活を送る友人の姿に、「仕事を辞めて自分も東京へ行くことを考えていた」。地域の先輩や仲間と食事に行って説教をされると「何でそんなこと言われなければならないんだ」と強く反発した。
しかし、経験を重ね数年がたち、説教だと思っていた言葉は、先輩たちの愛情だと感じ始めたという。地域が持つ技術の重要性にも気付かされ、「たくさんのものをもらっていたんだな」と考えるようになった。同時に「自分がもらったものを、しっかりと後輩たちに渡していきたい」との思いも強まっていった。
昨年はエキラボを開業するとともに、燕三条の工場を一斉に開放し、数万人を集める「工場の祭典」の実行委員長に就任した。新型コロナウイルスの影響のため、イベントは中止となったが、実行委は各工場の動画を配信する新たな形式で昨年10月、開催にこぎ着けた。
斎藤さんは「1社1社を回って、理解と協力をお願いした。配信した動画の再生回数が上がった時は、やってよかったという思いが強くなった」と笑顔を見せる。自身について、引っ張る役ではなく、旗を振る役だと位置付ける。「皆で一緒に考えて、皆で一緒に歩いていく方が楽しい」と強調する。
「燕三条のものづくりのポテンシャルはどこにも負けない。一丸となって、まち全体を未来へとつなげていきたい」と力を込める。育ててもらった地域への愛情は増している。
仲間と一緒につくったエキラボ帯織で活動する斎藤和也さん。「今でも先輩方から説教を受けるのはしょっちゅうです」と笑う=三条市帯織
「いいものがいっぱいあり、甲乙付けがたい」と、悩んだ斎藤さんがお薦めするのは、三条市大島の「侍ラーメン」だ。20年以上前の開店から通い、多い時は週6回食べた。「自分の中のソウルフード。血肉になっている」と思い入れもたっぷり。
お気に入りは、夜限定の「ピリカラ背脂煮込みラーメン」。後から来る辛みがくせになるという。「ねぎごはん」も一緒に頼むのが斎藤さん流。「最後はスープをネギご飯に入れて、おじやのようにして食べる。最高の一杯で、疲れが吹き飛ぶ」と自信を持って紹介した。
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