[未来のチカラ in 県央]
地域を支えてきた農業と金属加工業を「食」でつなぎ、活性化を目指す若手有志団体が燕市にある。2019年夏に発足した「TSUBAME×ACTIONS(ツバメクロスアクションズ)」、略してツバクロ。代表でラーメン店主の森山史朗さん(41)は「燕で築き上げられた宝は、食文化に集約できる」と力説する。食材PRやイベントの企画運営、情報発信に奔走してきた。
燕市吉田地区で生まれ育った。調理師学校を卒業して日本料理店やラーメン店で修業、29歳で地元に店を構えた。手作りの味にこだわり、野菜は知り合いの農家から直接仕入れ、調理器具も地元製品を愛用。「作り手の思いを背負うことで、気合が入る」という。
ツバクロの前身は吉田地区の特産「もとまちきゅうり」の普及団体で、18年に結成された。「ブランド野菜なのに知名度が低い」と悩む農家とタッグを組み、「飲むキュウリ」として、輪切りを浮かべたハイボールなどのレシピを考案。地元飲食店に掛け合い、メニューに加えてもらった。
熱意と企画力が評判となり、「一緒に活動したい」と農家や飲食関係者から声が掛かり、地元の調理器具メーカーの商品開発にも関わるようになった。「これまで燕では農業、飲食業界、工業、行政関係者が単独で動いてきた。横断的につながり合えば地域の可能性が広がる」。共通するキーワードは「食」だとひらめき、旗振り役を買って出た。
ツバクロのメンバーは農家、和洋中の料理人、飲食店、カメラマン、ライターら12人。多彩な顔触れが経験やスキルを生かして支え合い、地元企業や農協、行政も活動に参画する。
19年秋には世界に名高い燕産のカトラリー(金属洋食器)と地元食材を組み合わせたディナー企画を実現。県内外から訪れた約40人がフルコースを堪能した。
新型コロナウイルスで飲食業界が苦境に立った20年度は地元企業と連携し、地域にある飲食店のテークアウト情報を会員制交流サイト(SNS)で紹介。行政の協力を得てエリアごとに店舗情報を掲載したマップも作成し、市内各世帯に配布した。「ピンチはチャンス。多くの飲食店と関わり、横の連携が強まった」と充実感をにじませる。
同世代の仲間たちと語り合うのが、20年後の地域の姿だ。人口減少に歯止めがかからない中、地域外に情報を発信し、関係人口を増やす仕掛けをつくらなければ「手遅れになる」と危機感を抱く。
「まずは燕に興味を持ってもらい、訪れてもらう。次に住んでもらえる制度を整えないといけない。次の世代のために道筋を付けたい」と使命感を燃やす。
「農工商、異業種の協業で未来を開きたい」と語る森山史朗さん=燕市富永
森山さんが折に触れて訪れ、「自分のパワースポット」と推すのが、大河津分水路の洗堰(あらいぜき)(燕市)。信濃川に流す水量をコントロールし、越後平野を水害から守る要の場だ。
分水路の建設工事は1870年に着手。2022年に通水100年を迎える。「農業や産業が発展したのは先人の偉業があったから」。壮大な歴史を感じ、気持ちを高めている。現在の洗堰は2代目で、2000年に通水された。近くに信濃川大河津資料館や多目的広場もあり、「子連れでも遊べる」という。
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