[未来のチカラ in 県央]
「田上にある魅力を引き出して、にぎわいある町にしたい」。昨秋、田上町で初となる地域おこし協力隊に着任した森澤拓哉さん(37)は力を込める。着任してからの約半年間、町内を巡って課題を探り、人とのつながりを深めてきた。将来は、空き家の古民家を拠点とし、「竹林やタケノコ、梅...。地域資源を活用したビジネスをしたい」と夢を描く。
新潟市出身。新潟大工学部と東京大大学院を経て、首都圏の企業で営業職として働いてきた。同町の募集を知り、起業など柔軟な活動が可能なことに魅力を感じ、2020年10月、協力隊員になった。15年ぶりに新潟に戻り、「自然が豊かで空気がきれい」と首都圏との違いを実感している。
まずは地域を知り、現状を把握すること。着任してから自転車で町を回り、さまざまな町民の声を聞いてきたほか、町史を読みあさった。農業体験や野外コンサート、大みそかの花火など町を盛り上げようと活動している人が多くいることを知った。森澤さんは「自分が何をすべきかを考えるきっかけになった」と振り返る。
「磨けば光る」。地域活性化のため、森澤さんが着目したのは竹林だ。タケノコが特産の田上町。町によると、町内には約17ヘクタールの竹林があるが、所有者の手が行き届かず未整備状態の竹林も多いという。その解決策として、森澤さんは竹の活用やタケノコの消費増を目指す。ビニールハウスの骨組みや簡易的な小屋、竹紙など竹を材料にした製品作りを検討。また、タケノコのあく抜きの手間がかからない調理法や保存法を研究している。
森澤さんは「竹の使い道ができ、タケノコがより身近な食材になれば竹林を整備する人が増えるのではないか」と語る。
タケノコやもう一つの特産品「越の梅」を使ったメニューを飲食店に提案し、新たな名物もつくりたいという。
将来は、町内の空き家を購入し、起業を夢見る。新型コロナウイルスの影響で、テレワークの導入など働き方が変化する中、移住のモデルとなりたい考えだ。「家で働きながら、庭いじりをするようなライフスタイルを提案したい」とほほ笑む。
故事成語「隗(かい)より始めよ」が座右の銘。「まずは自身が形を示して人を集め、活性化の流れをつくりたい」と未来を見つめる。「町の人が親切でありがたい」。森澤さんは今日も町内を駆け回り、構想を練っている。
「放置されている竹林など町の課題を解決したい」と話す森澤拓哉さん=田上町田上
毎日自炊している森澤さんは、田上町産の野菜に感動している。生で食べるのが森澤さん流で、「野菜本来の味や香りが楽しめる。新鮮だからかな」と笑顔で話す。
定番のキャベツやネギなどに加え、店頭に並ぶ黄色のカリフラワーやパプリカ、セロリなどに目が留まる。栽培している品種の多さに驚き、「いろんな物が手に入るし、何を食べてもおいしい」と田上での食生活を満喫している。
町産の野菜は、道の駅たがみや町内の直売所、スーパーなどで販売している。
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