ごあいさつ コロナ時代の新聞とNIE

2021年05月19日

 2020年4月16日、全国の新聞社も学校も激しい変化を迫られた。新型コロナウィルス緊急事態宣言の全国への拡大である。新聞社では出社制限が掛かり、現地取材も困難になった。リモート取材が常態化し、記者たちはもどかしさをパソコンキーにぶつけた。学校は完全休校となり、教師たちは子どもの自習のための教材準備や健康把握に追われた。
 全国の緊急事態宣言が解かれると、対面の機会は増えたものの、新聞社も学校もソーシャルディスタンスの確保、対話時間の制限、人数制限、消毒の徹底など一層きめ細かな対応を求められた。このような危機的とも言える状況においても、新聞はいつものように家庭に配達された。学校は宣言前のように、子どもの笑顔であふれた。そして、NIE実践研究委嘱校では、新聞を使った授業が粛々と続けられていた。昨年度、6つの学校でNIE研究会が計画されていたが、すべての学校が開催方法を工夫し、総力を結集して見事な研究成果を発信した。頭が下がる思いである。
 思えば、2020年は新型コロナに関係する多くの誤った情報が大々的にSNSで拡散し、人々の心を惑わそうとした1年であったように思われる。そんな中で一つの調査結果が発表された。メディア情報の信頼度調査(日本新聞協会広告委員会)である。信頼度1位は新聞社で56.5%、2位はテレビ局で48.9%、3位は雑誌者で20%、4位はウエブ媒体で16.6%。偽りの情報が飛び交う時代、人々は真実を指し示す方法を強く再意識したようである。そして、フェイクニュースがあふれる時代だからこそ、様々な事象を検討し真実にたどり着こうとするNIEの授業もまた一層輝くのである。
 どのような不幸な経験であっても、何一つ無駄にすべきではないと思う。新型コロナウィルスの経験から、私たちはどんな未来の光を発見するのであろうか。

新潟県新聞活用教育(NIE)推進協議会 会長 伊藤 充