新潟地裁の法廷
新潟地裁の法廷

 新潟県内の2024年の刑法犯認知件数は9417件で、02年の約3万6千件をピークに大幅に減少しているが、その中身は時代の変化とともに姿を変えている。新潟地裁での刑事裁判の傍聴席から見えた、県内犯罪情勢の今を伝える。

 24年6月、三条市のアパートの一室。50代の女性は夕方、2人暮らしをしていた母親=当時(82)=に声をかけた。「今日の分、まだだよ」。認知症の進行を防ぐための日課として約束していた作文を、母親が書いていなかったためだ。

 母親は18年、認知症と診断され、物忘れや同じ話の繰り返しが徐々に目立つようになっていた。女性は「意思疎通が難しくなっていく母の姿に、不安と恐怖を感じていた」。作文のほかにも、クロスワードパズルを解かせるなど、進行を防ぐための対策を講じていたが、会話がかみ合わない時などはいら立ちをぶつけ、口論になることがあった。

 その日。期待するような文章を書けなかった母親を前に、認知症が進んでいるとの焦りや怒りが頭を埋め尽くした。「毎日同じ事の繰り返し」。気付くと、母親の足腰を何度も踏みつけていた。母親はその晩、...

残り885文字(全文:1355文字)