【2021/06/07】
待ちに待った新型コロナウイルスのワクチン接種がサンパウロ市で始まったのは1月末のことでした。ブラジルの都市では接種の先駆けでした。
1人目に選ばれたのは救急医療の現場で働く看護師さん。接種の映像を見た時には、出口のない暗闇にようやく希望の灯が見えてきたように思えました。
感染者数も死者数も高止まりのまま、先日、ついにサンパウロ州だけで累計の死者数が10万人を超えました。
身近に迫る感染、死への不安や恐怖、そしてさまざまな自粛や規制への疲弊感がまん延する中でワクチン接種が進んでいます。
接種はまず医療従事者、次に年齢を細かく区切って対象を広げていきます。サンパウロでも90歳以上の高齢者から順に接種が始まりました。
市内に約470カ所ある公立保健施設やサッカースタジアム、イベント会場を活用した接種会場にはドライブスルー専用会場が設けられました。密を避け車に乗ったまま接種できるため、予想以上に多くの高齢者が利用しています。

サンパウロの保健施設に設けられたドライブスルー形式のワクチン接種会場=5月12日
接種対象は全市民、実に1千万人以上。この気の遠くなるような作業を、医療が逼迫(ひっぱく)する中、可能な限り効率的かつ迅速に行わなければなりません。
ワクチン接種は予約制ではなく、事前にオンライン登録を済ませれば身分証明書を持ち、最寄りの接種会場に行くことができます。これは長時間並んでも在庫切れのリスクがある半面、行ける時にいつでも接種できるのが利点です。
また、長期保管ができないワクチンが無駄にならないよう、対象年齢層以外でも最寄りの保健施設に登録しておけば余ったワクチンを接種できるシステムも活用されています。
現時点でのワクチン接種率はまだ20%ほどですが、世界最悪レベルの新型ウイルス禍が続く中で、接種が進むと共に入院数や重症化数がようやく減少傾向に変わってきました。
前例のない「ワクチン接種大作戦」が順調に進むことを心から願っています。
◎佐々木暁子さん(新潟市秋葉区出身)佐々木さんは1971年生まれ。在名古屋ブラジル総領事館勤務を経て、現在はサンパウロで日本語を教えています。