ブラジルに新型コロナウイルスが持ち込まれて半年。感染者は右肩上がりに増え続け、減る気配がない。サンパウロでは外出自粛令がいまだに継続されている。最近になってようやくレストランなどの飲食店の閉鎖措置は緩和され、経済活動が再開され始めた。

 一般のレストランなどは感染予防のために客席の40%しか入場させないことや営業時間の短縮などから、店内ががらんとしている光景も少なくない。レストランで食事を楽しむのはおいしい料理だけではなく、店の雰囲気も大切な要素のため客席がすいているのは興ざめだ。

 しかも、座ったテーブルの横には×印がついているので落ち着かない。これでは客足は簡単に戻りそうもない。

入店制限が続くサンパウロ・東洋人街のラーメン店


 コロナウイルスの陰におびえながら「失われた日常」を追い求めるより、楽しく仲間や家族と過ごすことができると急速に広がったのが「リモート飲み会」(オンライン飲み会)だ。ブラジルはスマートフォンの普及率が日本よりも進んでおり、無料通信アプリLINE(ライン)やビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」などを使って幅広い年齢層の人たちに親しまれている。

 思い思いの飲み物と酒のさかなを用意し、スマホの画面に映し出された友人や家族と気兼ねなく話ができる。初めて誘われた時、味気ないのだろうと思いながら参加した。

 ところが、飲み屋で一杯やるのと何ら変わりがなく時間を忘れて楽しむことができた。回を重ねて気付いたのは、それぞれが自分好みの雰囲気をつくって楽しんでいることだった。

 高層マンションのベランダに小さなテーブルを持ち出し、きれいな夜景を写し出しているかと思えば、部屋を薄暗くしてBGMを流している人もいる。

 国内のみならず世界中の仲間と時間を共有できる利点もあるが、時差がネックになる。日本との時差は12時間で、昼夜が完全に逆転する。日本の時間を優先し午後7時から飲み会を開くとサンパウロは朝の7時。ちょうど朝食の時間になる。

 早朝から一杯飲むのははばかられるが、外出自粛を続けている身としてはあまり気にせず、「新しい日常」に挑戦する人も多い。


鈴木 雅夫さん(ジャーナリスト)
 (鈴木さんは母が三条市出身です)