初めてサンパウロを訪れた26年前、驚かされたのは渋滞のひどさと違法駐車の多さ、そして何より交通マナーの悪さでした。
人口が増え続けるサンパウロは大都市でもあり、こうした問題は人口増加と発展に比例して深刻になってきました。速度オーバーは当たり前、ウインカーなしでの乱暴な追い越しなど、まるでドライバー同士が競い合っているように見えたものです。
渋滞の背景には公共交通機関が整備されていないことがあります。バスや車が主な交通手段のため、朝晩の通勤通学時間になると大渋滞が発生していました。
このため、市は車両ナンバーによって週1回、朝晩のラッシュアワー時間帯を走行禁止とする条例をつくりました。これは最初こそ一定の効果を見せたものの、いまだに解決されていません。
一方、違法駐車は道路脇に設置する有料駐車スペースを大きく拡大し専用アプリで支払いを可能にしたり、監視を強化したりすることである程度の効果を上げています。
交通マナーはこの20年で目覚ましい変化を遂げ、改善しています。赤信号を乱暴に駆け抜けるドライバーも見られなくなり、また交差点で横断歩道をふさぐこともほぼなくなりました。
ここまで変わったのも、取り締まりと罰則が徹底的に強化されたからでしょう。
街中の隅から隅まで、至る所に交通局の監視カメラが設置され、情け容赦なく違反切符を切り始めたのです。
これで爆発的に違反通知書と罰金の支払書を受ける人が増え、また罰金額も高額なこともあって、情け無用の徹底取り締まりは見事なまでに効果を発揮したのです。「やればできる」を実証したといえます。
ブラジルといえば、治安の悪さが指摘されます。治安対策にも交通マナーのような徹底した取り組みが必要なのではないでしょうか。他の課題への対策についても「やればできる」日が来ることを願う今日このごろです。
佐々木 暁子さん(新潟市秋葉区出身)
(佐々木さんは1971年生まれ。在名古屋ブラジル総領事館勤務を経て、現在はサンパウロで日本語を教えています)