孫に誘われ始めたシール交換で独特な感性を発揮し、想像のななめ上を行くシール帳を作成した73歳の祖母。いつしかシール帳カバーやシールそのものを作るようになり、その動画が288.8万回再生を超える反響を呼び、「おばあちゃん手先器用すぎる」「お孫さんへの愛が溢れてますね」「平成レトロって感じで可愛い」などとコメントが寄せられた。祖母とシール交換を始めたきっかけをはじめ、オリジナルのシール帳カバーやシール製作に至った背景などについて、お孫さんに話を聞いた。
◆気楽に誘ったシール交換が…想像のななめ上を行くセンスあふれる祖母のシール帳
――「シール交換の相手がいないのでおばあちゃんとします」と祖母と始めたシール交換に、今ではおかあさんも加わり親子3代で行っているそうですね。そもそもシール交換を始めたきっかけは?
「もともとシールや便箋、メモ帳などの文房具が好きで、シール交換が流行り始めた頃にシールを集めました。平成時代にシール交換をしていたドンピシャ世代なので、懐かしさとコレクター気質に火がつき、いろいろと買っていました。そんなときに、ドラマ『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)を偶然観て、集めるだけでは物足りず、交換がしたいと思うようになりました」
――なぜおばあさんを誘ったのでしょうか?
「私の周りにはシールを集めている人がいませんでした。皆はどんな人と交換をしているのか、YouTubeで調べたところ、友達、旦那さんや彼氏、祖父と交換をしている人もいて、『すぐそばに気楽に誘える人がいるじゃん!』と祖母が頭に浮かびました。そして祖母を誘い、どうせならと動画も撮ることにしました」
――おばあさんのシール帳は、令和のシール交換の概念を覆す発想にあふれ、「すごくいい」とお孫さんも驚いていました。初めておばあさんのシール帳を見たとき、どのように感じましたか?
「私の発想の遥か上をいっていて、ひと味もふた味も違う感性を持っているなと誇りに思いました。昔から祖母の感性や作り出す物のセンスを尊敬していたので、シール帳でもそれを発揮してくれてうれしかったです。『私にまだみんなとは違う世界を見せてくれるの?』というワクワクも止まらず、シリーズ化しようと思いました」
――おばあさんの個性を活かした貼り方について、今はどのように考えていますか?
「シール帳は流行っていますが、流行りのものはどこか似たり寄ったりに見えます。だから流行っているともいえますが、祖母はその似たり寄ったりに混ざらず、祖母の中にある創意をシール帳でも表現してほしいと思いました」
◆「もう歳だからできない…」落ち込んでいく祖母に“ハンドメイド作家”という夢を提案した孫
――個性的なおばあさんのシール帳で、特に驚いたものや素敵さを感じたものは?
「舞妓さんシールです。和風や花柄が好きな祖母にぴったりで、そこから舞妓さんシールを貼るというセンスに、祖母らしさを感じました(第2回シール交換会より)。それと、シールを重ねて貼り、ストーリーを作っていたことです。いただいたコメントで気づいたことですが、コラージュというデコレーションをやっていたみたいです。シール帳にコラージュする発想がなかったので、びっくりしました」
――おばあさん製作のシール帳カバーに、「とても器用で羨ましい」「自慢のおばあ様ですね」「おばあさまのスキルも神技ですね」などと大きな反響があり、オリジナル手帳やシールを販売されています。ハンドメイド作家になるのは、おばあさんの夢でもあるそうですね?
「祖母は若い頃は仕事に追われ、私が生まれてからは、忙しい私の母に変わって私を育ててくれたので、たくさんのことを犠牲にしてきたと思います。まだいろいろなことができるのに、『もう歳だからできない』と落ち込んでいく姿が悲しく、何かできないかと考えていました。目標をクリアする成功体験を積んでいけば、もっと生き生きとしたおばあちゃんになれるのではと思い、第一の目標として『祖母の夢=ハンドメイド作家』を作りました」
――きっかけはお孫さんがお願いしたシール帳カバーでした。夢を叶えたおばあさんの感想は?
「祖母に『ハンドメイド作家デビューだよ!』と伝えた日、第1回目の販売会で完売した日、それぞれの日のことは覚えています。祖母はその瞬間に感情を出すタイプではなく、後になってじわじわと噛み締めるタイプなので、リアクションは薄めでした。後になって『うれしいね』と一言、涙目で私に言ってきたので、感動していたようです」
――生き生きとした感情を取り戻してくれたのですね。
「ネット上の顔が見えないやり取りのため、実感が湧きにくいようですが、みなさんのレビューなどを読んで気合いを入れています。何かを作って対価を得るという経験を通して、まだまだできる、落ち込んでいる場合ではないと祖母自身も思ったようです。これは私も望んでいたことだったので、想いが伝わってよかったです。今日も祖母は元気にミシンに向かっています」
◆シール交換を通した大きな変化は? 「2人で一緒にする“仕事”ができた」
――いまでは『yaco-club』というブランドを立ち上げ、おばあさんと二人三脚で活動しています。お孫さんにとってのブランドの存在は?
「『yaco-club』というブランドを祖母と一緒に作り上げたことは、大切な宝物になっています。大好きな祖母と一緒に何かをしたいと漠然と感じていて、自慢の祖母が作る素敵な作品を誰かに届けることができたらと常々思っていたので、このような形で実現できて本当にうれしいです。10年後、20年後、その先も『yaco-club』として活動していけるように、最大限のお手伝いをしていきたいです」
――自慢のおばあさんとのことですが、幼少期はどうだったのでしょうか? 印象に残っている出来事や思い出を教えて下さい。
「一番印象に残っているのは、夏休みの宿題を一緒にやったことです。お菓子の箱の中に紙粘土と絵の具で海と空を作り、拾ってきた貝殻を貼り付け、『夏休みの思い出』という作品を作りました。小学1年生ながらかなりの大作になったので、クラス代表に選ばれ、全校生の前で発表しました。作っている時間がとても楽しく、発表したことより記憶に残っています」
――それは素敵な思い出ですね。大人になってからはどうですか?
「祖母は若い頃、和裁の専門学校で資格を取り、そのまま専門学校の先生もしていました。そのため、私の成人式の振り袖と髪飾りは、祖母が縫ってくれたものでした。誰よりも私の振り袖と髪飾りが可愛くて、私の雰囲気にぴったり合っていて、友達に自慢しました」
――シール交換がきっかけでブランド立ち上げとなりましたが、2人の関係性に変化はありますか?
「けんかもするし、一緒に手を繋いで買い物も行くし、私と祖母の関係は以前と変わりありません。ただ、2人で一緒にする“仕事”ができたのは、変化かもしれません。2人で共有するものに『yaco-club』が加わった感じです。今はシールが手に入りづらいので、シール交換よりもシールを作ることに夢中になっています」












