「船が流氷に挟まれると動けなくなる。流氷がくる時は、しけでも海が静かになるから分かるんだ」と蟹工船時代を振り返る森井一蔵さん=佐渡市姫津
「船が流氷に挟まれると動けなくなる。流氷がくる時は、しけでも海が静かになるから分かるんだ」と蟹工船時代を振り返る森井一蔵さん=佐渡市姫津

 「おい地獄さ行ぐんだで!」。衝撃的な書き出しで始まる1920年代の小林多喜二の小説「蟹工船(かにこうせん)」。北洋で捕獲したカニを、船上で缶詰にする設備を持つ船を指す。小説は過酷な労働や労働者と船主側の対立を、実話を基に描いた。佐渡市姫津の森井一蔵さん(89)も戦後の蟹工船の乗組員だった。当時の経験を後世に伝えながら今も自分の船で漁に出る現役の漁師だ。

 蟹工船への初乗船は56年5月。函館から出航し約5カ月、北洋でカニを取った。母船は漁場で川崎船と呼ばれる小型船を8隻ほど下ろし、川崎船の乗組員は、仕掛けた網からカニを外す。カニを缶詰に加工する母船を含め、200人以上が働いていた。森井さんは9人乗りの川崎船の乗組員で、後に船頭になった。

 仕事はきつかった。午前3時に起き午後5時ごろまでぶっ通しで働く。食事は作業をしながら...

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