【2021/06/07】

 新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、ニューヨーク(NY)市にも明るさが戻ってきました。とはいえ、100日にわたるロックダウンを経験したこの街はまさに満身創痍(そうい)。閉じたままのお店も多く、経済的な影響は計り知れません。

 新型ウイルスとの闘いの中、これから街がどう復活し、変わっていくのか。誰もがマスクで覆った表情に一抹の不安をのぞかせています。

 そんな中、感染禍の置き土産ともいえそうなポジティブな街の変化があります。それは、レストランの屋外席です。ロックダウン解除後の昨年6月下旬、NY市はいち早くレストランの屋外席の設置を許可する「オープン・レストラン」プログラムを施行しました。

 感染の危険性が高い店内飲食が禁止となったレストランは、当初、テークアウトや宅配サービスだけでしのいでいました。瀕死(ひんし)の飲食業界を救うための苦肉の策が、歩道や道路の一部にテーブルと椅子を置いて飲食スペースを作るオープン・レストランのアイデアでした。

 新型ウイルスの危機がなければ、道路使用まで許可する大胆な政策は不可能だったでしょう。市の英断にニューヨーカーたちも即座に反応し、ひいきのお店に駆けつけました。屋外席は屋根だけの簡易なものから凝った個室形式までデザインはさまざま。冬場は雪の中、防寒具に身を包み飲食するつわものも多く見られ、日本料理店の掘りごたつも話題になりました。

 当初は期間限定とされていたオープン・レストランが昨年9月に常設になり、新型ウイルス収束後も継続される見込みとなりました。店内利用が可能となった現在も、さわやかな屋外席は大人気。パリの街角やアジアの屋台を思わせる屋外席の出現で、NYの街並みは格段に面白くなりました。思い切った政策と、変化を柔軟に受け入れ、街を盛り立てる住民の心意気が結実したレストランの屋外席。NY市の新名物になるのかもしれません。

利用者でにぎわうブルックリンのレストランの屋外席=5月

◎高橋幸世さん(長岡市出身)高橋さんは作曲家・アーティスト。ベルギー、カナダを経て2012年からNYブルックリン在住です。