【2021/03/01】

 ノルウェー人との結婚をきっかけに、首都オスロから北に500キロ離れた山あいの村に住んで5年になる。

 人口200人ほどの私の村では、5月や6月に雪が降ることもある。かといって「ネコはこたつで丸くなる」というわけではない。ここの人々は気温が氷点下でも雪が降っても全く意に介さない。

 晴れた日と同様、クロスカントリースキーやウオーキングに出掛けていく。新鮮な外の空気に触れ、自然の中に身を置くことを重視するお国柄なのだ。

 「散歩に出ればいつでもごきげん」のことわざがあることからも分かる。「悪い天気は存在しない。存在するのは悪い服装だけ」というのもある。きちんと暖かい服を着込み、おでこも耳もすっぽりとニット帽で覆えば、外気に触れるのは顔の一部だけ。悪い天気と思うのは、自分の服装が悪いという意味だ。

 しっかり防寒対策を施せば、天気が悪いからといってアウトドアの予定をキャンセルする理由もなくなる。週末や休暇を過ごす場所として定番のヒュッテ(自然を楽しむための簡易別荘)の存在も、自然をこよなく愛するノルウェー人の象徴のように思える。

 新型コロナウイルスの影響はこの国にも例外なく及んでいる。規制や国境管理の厳格化と緩和が繰り返される中で、不安定な就業や就学が続く。都市部の人は地方への帰省を控えることを余儀なくされているが、それでも家族でのヒュッテ滞在は外出規制の対象外なのだ。

 行動が制限され、さまざまなストレスにさらされているときに、以前のように自然の中で休暇を楽しむ。いかにもこの国らしい。この国の人々には大きな支えになっているのだろう。

 極寒の中、きょうもこの国のどこかで防寒具に身を包み、ヒュッテに急ぐ人がいるのかもしれない。何しろ、悪い天気は存在しないのだから。

標高900メートルにある知人のヒュッテ。ノルウェーでは、ヒュッテでの滞在は外出規制の対象外になっている

◎石橋恵子さん(大阪府出身)石橋さんは1969年生まれ、大阪府出身。小中学校4年間を新潟で暮らし、2016年ノルウェーへ移住。現在は建設資材などを販売する店に勤務しています。