【2020/11/16】
ロシア政府は近年、極東地域の開発に力を入れている。人口減少を食い止め、移住者を呼び込もうと、2016年に「極東1ヘクタール制度」をスタートさせた。これは、極東の未利用地(1人あたり1ヘクタール)を希望者に無償で提供し、所定の条件を満たす利用実績があれば、4年半後にその土地区画の所有権を認めるという制度。さらに先日の法改正で24平方メートル以上の住宅を建設すれば、前倒しで土地の所有権が取得できることになった。
ただで土地がもらえるというのは、特に新しい制度ではない。11年には少子化対策の一環として、3人以上の子どもがいる世帯へ無償で土地を提供するプログラムが全国で施行された。
ウラジオストクに住む知人は、14年にプログラムへの参加を申請した。土地の抽選会を待つこと約4年、抽選で引き当てたのは市中心部から空港へ向かう途中の山中、かなりの傾斜地の約1200平方メートル。
無論、電気も水道も道もない。たどり着くには衛星利用測位システム(GPS)だけが頼りである。
近況を聞こうと久しぶりに知人に連絡をとった。このコロナ禍、テレビでは破産手続きサービスのCMをよく見かけるようになったという。例の土地は保留のままにしてあるそうだ。極東の制度同様、実際に土地を所有するかどうか決めるまで数年間の猶予がある。
ただでくれるのはいいが、所有したら税金は所有者が払うのだ。うかつにはもらえない。極東1ヘクタール制度では、10月中旬時点で約8万5700人の人が土地の提供を受けたという。このうちどれ程の人が実際に活用できているのだろう。
「根性のある人は井戸を掘ってますよ」。知人の言葉に、笑うに笑えない思いだった。
JSN・釡池芙美代