イノシシが踏み荒らしたあぜ、食い散らかされた農作物…。中山間地の住民は、ため息交じりに口をそろえる。「昔はいなかったのに」。新潟市のど真ん中に出没するなど野生動物であるイノシシがまちなかでも目撃されるようになった。その生息域と人里との境界が曖昧になった背景には人口減少の影がある。被害に直面する現場を訪ねた。(文・川島薫、写真・永井隆司=いずれも新潟日報上越支社)=5回続きの5
【2023/03/08】
「狩猟免許、取ってみるか」。上越支社に赴任して1年がたった2022年春、取材を差配する先輩記者から“指令”が下った。
「ルポ人口減少」シリーズでは、春は農業、夏は祭り、秋は空き家、冬は鳥獣被害を取材しようとプランを練っていた。記者自ら狩猟免許を取得することで、被害に向き合う人たちの現状に少しでも理解を深められれば、と思った。
以前の取材で新潟県大島区田麦集落を訪ねた際、県猟友会東頸城支部の山岸健二支部長(76)から、捕獲したイノシシの肉をお裾分けしてもらった。鍋にしたり、焼き肉にしたり、とてもおいしかった。
自分で捕れたら楽しいかも-。そんな気持ちも芽生え、狩猟免許取得に挑戦してみることにした。...
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