クマ外傷の治療方法について話す中永士師明医師=秋田市の秋田大医学部付属病院
クマ外傷の治療方法について話す中永士師明医師=秋田市の秋田大医学部付属病院

 全国的にクマの出没と被害が相次いだ2025年、秋田県は自衛隊にクマ対策支援を要請するなど緊急事態に見舞われた。秋田大医学部の中永士師明医師(62)は、大学の他の医師らと治療方法や対策を解説する「クマ外傷」を出版した。心身に深い傷を残す実情を伝えるとともに、「クマは本来、繊細な動物。正しく怖がる姿勢が必要だ」と訴えている。クマによる人身被害と30年以上向き合う中永医師に、その深刻さなどを聞いた。(論説編集委員・風間栄治)

-「クマ外傷」は医学書なので生々しい内容も含まれます。出版の動機は。

 「人間がクマに襲われると『命に別条はなかった』という報道を見かける。軽症と思われがちだが、その後の人生を変える重症もある。クマの攻撃力がいかにすさまじいか、現実を知ってほしいと思った」

-けがは体のどの部分が多いのでしょう。

 「最も多いのは顔面で、86%を占める。最初の一撃はほとんどが前足の爪による。クマは立ち上がって人間の顔を狙い、...

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