新潟空港と中国・黒竜江省ハルビンの直行便が1月に再開し、一時全路線が運休していた新潟空港の国際線は新型コロナウイルス感染拡大前に戻った。訪日客の動きが再び始まり、新潟県経済の回復に期待が高まる。ただ、日中関係の悪化や能登半島地震の影響が懸念され、楽観視はできない。1月に花角英世知事を団長にハルビンと韓国・ソウルを回った県の訪問団に同行取材し、課題を探った。(報道部・長野清隆)=2回続きの1=

 1月15日、花角知事らを乗せた機体がハルビン空港の滑走路に滑り込んだ。4年間閉ざされていた、中国東北部との空の玄関口が再び開かれた。

 新潟県と黒竜江省は1983年に友好提携を締結。官民の交流が実り、98年に開設されたのが新潟-ハルビン線だ。売りは全国で新潟空港だけの「オンリーワン路線」。以来、県が重要路線に位置づけてきた「老舗」の一つだ。

 「友好提携40年を記念する訪問なら再開初便で」。花角知事は強くこだわり、この日を待った。

▽「今夏までに週3~5便飛ばしたい」

 訪問団には3日間の滞在期間中、省政府や議会の代表者との面会以外に重要な予定があった。ハルビン線を運航する中国南方航空の黒竜江支社訪問だ。

 感染禍前のハルビン線は週4便だったが、今回は週1便での再始動となった。観光の経済効果を考えれば、訪日客が新潟から入国し、新潟から出国するのが理想だが、「週1便では限界がある」(県空港課)。一行にとって、増便の働きかけは大事なミッションだった。

中国南方航空黒竜江支社の幹部から機体の模型を贈られる花角英世知事(左)=1月16日、中国・ハルビン市

 会談中、庄樹際(しょうじゅさい)副支社長は終始にこやかな表情で応じ、「できれば毎日飛ぶようにしたい」とも語った。その第一歩として「今夏までに週3〜5便を飛ばしたい」と具体的な目標を示し、訪問団を喜ばせた。

 同時に注文も付けた。感染禍が収まって人の移動が活発になり、全国の空港では搭乗手続きや荷物の積み降ろしなど地上業務を担うスタッフの確保が課題となっている。庄氏はそこに不安を抱き、「増便前に受け入れ体制の課題をクリアしてほしい」と要求した。

▽春節後の人の流れ、見通せず

 ただ、県はこの問題に対し、昨年既に手を打っている。新潟空港で民間が行う地上業務の人員確保に補助金を出し、後押ししてきた。県は「ただちにネックにはなっていない」(花角知事)との認識だ。

 中国南方航空から地上業務を請け負う日本航空の田村一恵・新潟空港所長も「運休前と同じ程度の便数に対応できるよう準備は進めてきた。増便の提案があれば、受け入れられるよう調整したい」と説明する。

 大きな課題は別にある。乗客の確保だ。初便の利用率は6割、その後の便も6〜8割台が続く。感染禍前の2019年度の年間平均利用率は64・8%だったため、現状ではおおむね維持できている。ただ、中国南方航空新潟支店は「(10日の)中国の春節(旧正月)を前に人の流れが増えているが、春節後はどうなるかは見通せない」とする。

 新潟-ハルビン線の相対的な「地盤沈下」も指摘される。四半世紀前の開設当時は全国唯一の直行便で、首都圏に住む中国東北部出身者の帰省路線としても利用された。しかし、その後に成田、関西、中部国際の各空港に直行便が飛び、「オンリーワン」の優位性は過去のものとなっている。

 訪問団メンバーの太田勇二・県交通政策局長は「所要時間は2時間半と、新幹線で東京に行くのとあまり変わらない時間で到着することを実感した。40年間、黒竜江省と交流を続けてきた強みを生かし、路線を維持したい」と強調。利便性や交流の歴史をアピール材料にしていくとした。

連載<下>期待高いが障壁も…を読む