
オイシックス新潟アルビレックスBCの1年目の挑戦が幕を閉じた。球団創設翌年から17年間戦った独立リーグから、日本野球機構(NPB)の2軍戦、イースタン・リーグへ舞台を移した今季。126試合を戦い、41勝79敗6分けで8球団中最下位に終わったが、高いレベルの相手に食らいつき、白熱した試合を展開した。新潟県内球場での盛り上がりも熱を帯び、選手たちを後押しした。初参戦の軌跡をたどった。(運動部・山崎祥吾)
⚾ ⚾
最下位でも、ホーム新潟では互角の勝負!
9月29日の最終戦後、橋上秀樹監督は「もっと厳しい戦いを強いられると覚悟していた。想像以上に戦えた」と今季を振り返った。指揮官の言葉の裏には、ホーム戦での好成績があった。当初の目標勝率は4割。全体では3割台に終わったが、ホームに限れば64戦中33勝で5割超え。NPB球団を相手にがっぷり四つに戦った。
ホームの強さを印象付けたのは、9月3、4日の中日2連戦。ともに終盤に追い上げて、連日のサヨナラ勝利で観客を沸かせた。主将の藤原大智は「(ホーム戦は)簡単には終われない気持ちになる」と語る。地元の声援が選手の底力を引き出した。

チーム打率は2割4分3厘。他球団と比べても引けを取らない。首位打者となった知念大成、前阪神の髙山俊らが打線をけん引。6月半ばに前半を終えた時点では長打が少なかったが、攻撃力は徐々に向上した。前半戦で計9本にとどまった本塁打数も、最終的には計35本に。質の高い相手投手陣に順応していった。
投手陣は若手と元NPB選手が融合し、シーズンを通して奮闘。今季79敗を喫したが、大量失点で負けることは多くはなかった。先発投手陣は、前広島の薮田和樹が柱として引っ張った。リーグ最多の143回を投げ、防御率は3・65。新加入の目黒宏也は序盤にけがで出遅れたものの、4勝を挙げて実力を示した。

中継ぎでは、リーグ最多の102三振を奪った下川隼佑ら若手が躍動した。新人投手も場数を踏み、選手層は厚みを増した。抑えの上村知輝は20セーブを挙げセーブ王に輝き、存在感を見せた。

ただ、62戦で8勝にとどまったビジター戦は、来季への課題となりそうだ。ビジター球場へは原則、新潟から大型バスで長距離を移動する。またリーグは3連戦が基本で、中止がなければ年間約140試合の長丁場。BCリーグ時代とは違う。
特に若手は、調子の維持に苦労した印象だ。大卒ルーキーの目黒も7月以降勝利がなかった。「自分では気付けないような疲れがあった」と吐露する。

橋上監督は「野球選手にとって、移動疲れは言い訳にならない。慣れるしかない」ときっぱり。調子を維持し、ビジターへの苦手意識を克服できれば、来季は上位に食い込める可能性が十分にある。
⚾ ⚾
実力の証明、挫折からの再起…それぞれの戦い
オイシックス新潟アルビレックスBCは日本野球機構(NPB)の2軍戦、イースタン・リーグに今季初参戦し、選手たちは自分の実力を試した。自軍を「NPBに一番近い場所」と例える橋上秀樹監督。ウエスタン・リーグとの交流戦もあり、プロ野球全12球団と直接力比べができた。NPB入りや復帰を目指す選手にとってこの上ない環境だ。

リーグの試合数は、年間約140。昨季まで所属したBCリーグの約2倍で、プロ野球1軍のペナントレースと変わらない試合数をこなす。対戦するのは、NPBでしのぎを削る選手たちだ。
長丁場を戦える体力があるのか、技術レベルがNPBに通用するのか。社会人リーグなどでは測れない尺度で、選手を評価できるようになった。今季社会人野球の沖縄電力から加入し、NPB入りを目指す知念大成は「体の疲労感も違う中で結果を出さないといけないところは、社会人時代よりも勉強になった」と振り返った。

戦力外通告を受けた元NPB選手にとっては、再起を誓える場所だ。今季のオイシックスでは、前阪神の髙山俊や前DeNAの田中俊太ら元NPB選手が、チームの主力として活躍。シーズンを通じて、アピールする機会に恵まれた。
元NPB選手は移籍期限の7月末までであれば、シーズン中に復帰は可能だった。しかし、返り咲きに成功した選手はいなかった。来季以降の復帰へ向け、声が掛かるのを待つ。

リーグ最多の143回を投げた前広島の薮田和樹は「他の選手にもおすすめしたい環境だ」とした上で...