
社会に急速に普及する生成人工知能(AI)。警察当局でも活用を探る動きが加速している。捜査に関する膨大な情報や資料を分析し、治安維持にどう生かすか。現在は、組織の全容を捉えにくい「匿名・流動型犯罪グループ」に対抗するツールとして実戦投入の準備が進む。幅広い分野への導入も期待される一方、捜査の方向性を見誤らないためには最終的に捜査員の判断力が不可欠だ。現状や課題を探る。
「眠る情報」掘り起こす
100万件以上ともされる組織犯罪に関する膨大な警察情報が、初めて網羅的に読み込まれる。生成人工知能(AI)を使った警察庁の「匿名・流動型犯罪グループ(匿流)情報分析システム」。いわば“AI分析官”だ。2027年3月の運用開始を目指し、構築が進められている。
全国の警察が組織犯罪の情報を入力する「組織犯罪情報管理システム」にアクセスし、人物相関図と分析リポートを作成。情報の中に埋もれた関係性から匿流の「首魁(しゅかい)」と呼ばれる首謀者をあぶり出すのが狙いだ。
03年にデータベース化された管理システムには、捜査報告書や供述調書など文書データが登録されている。人物情報は本名やアカウント名、通し名、氏名不詳者など数百万人分とされる。捜査で浮上した人物をキーワード検索し、重要度の分析などに使ってきた。
ただ入力形式が不統一な「非構造」データが蓄積され、数百点の文書がヒットしても、結局は捜査官が全てを読み、関連情報を探し、真偽を確認することが必要になる。全量を読み込むのは不可能で、捜査幹部は「作業が膨大で使い勝手が良いとは言えない」。
そこに切り込むのが、捜査報告書など非構造データを“理解”する生成AIだ。「宝の持ち腐れにならないよう活用したい」。同庁の匿流担当幹部は管理システムの「眠る情報」の掘り起こしに期待する。
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警察庁は19年度から毎年度、業務を選定してAIの実証実験を実施。今は(1)マネーロンダリング(資金洗浄)が疑われる取引情報の分析(2)交流サイト(SNS)の闇バイト募集投稿の監視-に導入している。
さらに生成AIを活用するには、警察が扱う情報は機密性が高く、外部と隔絶した専用の環境が不可欠だ。警察庁は内閣府の研究開発プログラムに応募し、24年4月から1年間、インターネットに接続しない「クローズド環境」で生成AIが利用できるか検証。新たに運用開始を目指す匿流分析システムは、この取り組みの過程で生まれた。
生成AIの急速な進化に対応するため、「アジャイル」と呼ばれる試作と改善を繰り返して開発を進める手法を採用。「世の中に出たばかりの新技術」(技術企画課幹部)を使ってプロトタイプ(原型)を構築し、データの文脈を理解して相関図を出力できることが分かった。
捜査官が「Aグループの中心人物は?」などと質問を打ち込むと、匿流分析システムが管理システムの文書データを読み込み、人と組織、場所を「点」として配置。さらに相互の関係を線で結んだ人物相関図と、「グループの中核人物はBとされ…」といった分析リポートを作成する。

今後は匿流分析システムの「頭脳」であるソフトウエア環境をさらに整備して本番に備える。一方で、匿流担当の幹部は、事実ではない内容を生成してしまう「ハルシネーション(幻覚)」のリスクも...











