
新潟市中央区の県民会館で5月23日、木梨憲武さんの個展が開幕します。お笑いタレント「とんねるず」として活躍する一方で、近年はアーティストとしての活動も注目を集める木梨さん。国内外で個展を開催してきましたが、新潟県では今回が初めてです。自由な表現と鮮やかな色彩は、どこから生まれるのか。都内にある木梨さんのアトリエで、本展への思いや新潟の皆さんへのメッセージを聞きました。
木梨憲武さんインタビュー

「皆さん、いらっしゃいませ。ありがとうございます。新潟から、ようこそ来ていただきました」
-3度目の全国巡回展ですが、新潟では初開催です。テーマは「TOUCH SERENDIPITY-意味ある偶然」。どんな思いが込められているのでしょうか。
「タッチは、触れたり、触ったりしてもいいですよっていう作品が何点かあるから。美術展だと静かにしなくちゃいけないみたいなのも、もう少し緩く楽しむムードにならないかなって。触って何を感じるかは人それぞれなんですが。もう一つは『初めまして』の握手やハイタッチみたいな意味も含めて、少し近づく、近づけるというようなイメージ。今回は新潟の皆さんに近づきたいというテーマでもあります」

-うれしいですね。本当に触ってもいいんですか?
「泥んこをつけちゃいけないとか、そういうマナーは何となく皆さんが感じていただければ。『これは触っていいです』『これは危ないんで気をつけてください』とか書いてあるから。いろいろな作品がそろってます」
-「意味ある偶然」というテーマもついていますが、この意味は。
「その瞬間は分からないんだけど、後から『いや、あれは意味があった偶然だったんだ』って思うことがある。今回の新潟の展覧会も(見た人が)後になって、偶然じゃなくて意味があったんだ、って感じられるんじゃないかな」
◆1人学園祭、まちおこしみたいな
-どんな展覧会になりそうですか。
「僕のはアートっていう難しいジャンルではない。1人学園祭、まちおこしみたいなもんです。『木梨が気取って絵描いたんだってさ』とかじゃないですから。みんなで全力で盛り上げて、お祭りのようにしたい」
-学園祭ですか?
「学生のとき張り切ったでしょ、仲間と。で、自分はこう思ってても、仲間たちが『こっちじゃない』とか言ってたら、『そうっすね』。1人だけよくてもしょうがないんで。同じように今もチームの皆さんで作り込んでます」

「楽しい現場があって、楽しい展覧会になるんですね。今回は過去20〜30年の作品を選抜で持っていってライブで準備する。場所や照明で同じ作品がどういうふうに変わっていくか楽しみ」
-見るのが好きな人も作るのが好きな人も、皆さんで楽しめそうですね。
「もちろん。ものすごい丁寧に、ものすごい細かく描いた作品がいいのか。さっと1本だけ線を引いた方がいいのか。これは人それぞれだったり、作品のタイトルだったり全部違うんで、その要素のあるものを全部持っていきます」
-会場には何点を展示する予定ですか。
「ちっちゃいおもちゃまで入れると200〜300になると思うんですが、いっぱい持っていって、会場を見ながら飾り付けをするから、飾れない分も出てくる。新作も持っていきます」
-いろいろな表現方法を用いた作品がありますね。
「リーチアウトというシリーズは二十何年間ずっと描いてます。タッチと近いんですが、困ってたら手を差し伸べて助ける。自分が余裕があったら助けてあげるとか、そういう意味がある。その都度、そのテーマでやってます」

◆安田成美さんの判断は速い
-展示する作品や並べ方は、木梨さんが会場を見て決めるそうですね。
「僕と(妻で俳優の安田)成美さんとスタッフのみんなで。ほぼほぼ全般、成美さんですね。一緒に行って僕より早く決めてくれます。みんな悩むじゃないですか。うちの成美、悩みないんで(笑)。『はい、ここ! ちょっと待って、やっぱこっち!』って判断のスピードが僕には付いていけない。僕は最後の細かいところをちょっと。これやっぱ足そうとかっていうのをやってます」
-他会場では、展示後の作品に手を加えたり、壁などにも絵を描いたりしたこともあったとか。
「いやもう、時間があれば。それが面白いことに、会場によって『これは描いても大丈夫です』とか『ここはダメです』とか全部違うんで。そうすると色つけてみたり。で、描いちゃダメだってところに描いてみたり(笑)。いろいろですね。でも時間がね。限られた仕上げの時間しかないんで」

-タレント、音楽活動など多忙な中、創作はどんなふうにしているのですか。
「時間があるときはここ(アトリエ)でテーマが決まると描く。1日で描き上げようとは思ってないんで、少しずつ下地から。さあ何しようかなって思いついたらスタート。インスピレーションが来たとき。ここ何年かはそういうやり方です」
「絵はもともと、テレビ番組のワンコーナーからのスタート。アートの勉強はしてないし、美術大学にも通ってない。タイトルと作品だけでスタートしてる。それがオブジェだったり、平面だったり。作品のゴールがどこなのかを自分で判断して、自分が決められないときには横にいる人に決めてもらえばいい」
◆歌手もアートも免許ないから自由に
-木梨さんの著書に「画家には資格や免許がいらない」という趣旨の言葉がありました。
「その通り。歌手もアートも免許がいらない。自分が思うだけでいい。『あ、今日から歌手なんだ』『今日から画家なんだ』とか、思い込みだけで(笑)」
-画家と自己紹介することもあるんですか。
「海外から帰るときの紙(出入国カード)に画家や(家業の)自転車屋って書いたり。歌手です、とかね。どれもやってるんで。(審査の人は)『あ、そうなんでしょうね』みたいな顔してますけど(笑)」
-木梨さんにとって、表現するってどういうことですか。
「最初はちょっと恥ずかしかった。『え、俺が展覧会やるの』『そういうのやっていいの』みたいなとこからスタートした。初めて(1994年に)名古屋で展覧会をやったときから味をしめてるんですよ、僕は(笑)」
「そのうち、全国の美術館を巡回したり声をかけられたりっていうのが広がってきて、じゃあ行ってないところに全部行こうと。展覧会に呼ばれた喜びとともに、最初の個展から『だったら見てください、どうですか』って(思いでやっている)。(以前より)どんどん、もっともっとになってきてますかね」

◆新潟の思い出はジャイアント馬場さん
-新潟の思い出はありますか。
「とんねるず時代によくコンサートに行かせていただいた。あるとき、会場近くの体育館でプロレスの試合があったんですよ。輪島(大士)さんが知り合いだったから、とんねるずのコンサートが終わって試合前に駆けつけたら、ちょうどジャイアント馬場さんが様子を見に来られた。馬場さんの表情では、とんねるずを知ってるか分からなかったから、俺が『こんにちは! すみません、あの、とんねるずと言います』ってあいさつしたら、馬場さんが『ふうん』(馬場さんの物まねで)って。俺、意外に昔のこと忘れるのに、新潟の思い出は一つも忘れないですもん。ドラマにできるぐらいの貴重な思い出(笑)」
-新潟の皆さんにメッセージをお願いします。
「それぞれの街の会場に、さまざまな表情で、多くの人が来てくれるのが本当にうれしいんです。だから自信を持って描ける。俺の作品を見て、みんな自信を持っていい。『ああ、こんなもんでいいんだ』って(笑)。紙と色を用意すれば何でも表現できるって感じると思います。インスピレーションを得て、皆さんも帰宅して描いて、額装して、部屋に飾るっていうのがスタートしたらうれしい。そういう代表としてお邪魔します」
「新潟、早く行きたいです。木梨がどんなこと描いてるのかな、展覧会って何?って思ったら、(とんねるず)世代の人も、そうでもない世代の人たちも、お時間あれば、ぜひ遊びに来てください。ありがとうございます!」
作品の見どころ紹介
「感謝」2013年
©NORITAKE KINASHI
縦225センチ、横135センチ。「FLOWER」シリーズの中でも、ひときわ大きな作品。中央に花束が大胆に描かれ、カンバスからはみ出している。人それぞれが想像する感謝の形を、赤や青、黄などさまざまな色で表現している。
「moment!!」2025年
©NORITAKE KINASHI
本展に向けた最新作「TOUCH」シリーズの一つ。幾つもの色を乗せ、大胆に曲線が描かれている。ただ見るだけでなく、実際に触れて、確かめて鑑賞できるのも特徴。新しいアートの楽しみ方を提案している。
「MOVE」2023年
©NORITAKE KINASHI
触れて楽しむことができる「TOUCH」シリーズの作品。アクリル画に立体感を持たせるモデリングペーストを使い、ボリューム感のあるハートを描いた。材質の特性で1日たつと固まってしまうため、創作は1回勝負でやり直しが利かない。
「KAWAGUCHIKO-FUJI&UFO」2025年
©NORITAKE KINASHI
山梨県の河口湖から見た富士山を描いた「旅」シリーズの1点。富士山を題材にした作品は多いが、どれも趣が異なる。絵の中の白い物体は、雲かUFOか?
「イチリンザシファミリー」2025年
「FRIENDS」シリーズから。一輪挿しに着想を得て生まれた。花束を買って最後まで元気に咲く一輪の花を表現。個性的で愛らしい表情のキャラクターがたくさん描かれている。会場でお気に入りを探してみてはいかが。
「ouchi」2015年
©NORITAKE KINASHI
「OUCHI」シリーズは、木梨さんが旅先で印象に残った家と、そこで暮らす人々の生活を想像して描いた。
「REACH OUT TOUCH」2019年
©NORITAKE KINASHI
手をモチーフにした「REACH OUT」シリーズは、人と人のつながりを表現した作品群。長年取り組んでいるテーマで平面だけでなく立体作品もある。
木梨憲武さんメッセージ動画
■会期 5月23日(土)〜6月28日(日)午前10時〜午後5時(最終入場は午後4時半)。6月15日(月)は休館。
■会場 県民会館ギャラリー(新潟市中央区一番堀通町)
■入場料 前売り券は5月22日(金)まで販売。一般1600円、中高生1200円、小学生600円。インフォメーションセンターえん(新潟日報メディアシップ1階)や県民会館、セブン-イレブンなどで取り扱い中。NIC新潟日報販売店でも取り次ぎます。当日券は一般1800円、中高生1400円、小学生800円。未就学児は18歳以上の保護者同伴に限り、入場無料。
■主催 新潟日報社、NST新潟総合テレビ、新潟市芸術文化振興財団
■問い合わせ 新潟日報社ふれあい事業部、025(385)7470(土日祝日を除く午前10時〜午後5時)。











