
約四半世紀前、ひきこもりを「生き方の選択」と肯定的に捉えた1冊の本がこのほど復刊し、注目されている。2023年に死去した評論家芹沢俊介さんの著書「引きこもるという情熱」(くるんば刊)。国の新たな支援方針を先取りした内容で、当事者や家族は「理解を深める一歩に」と期待する。
3月、東京都内の書店で開かれた復刊記念イベント(一般社団法人「SHIPひきこもりと共生社会を考えるネットワーク」主催)には約100人が詰めかけ、関心の高さをうかがわせた。
家族や教育などの分野の評論で知られる芹沢俊介さんが著書を世に出したのは2002年。当時は新潟少女監禁事件(00年)などで、逮捕された人物がひきこもりだったとの報道に注目が集まり、不登校の延長として問題視する風潮が強かった。
これに対し、芹沢さんはひきこもりが本人だけでなく、社会や環境との関係性に起因すると指摘。「自分らしさが損なわれる危機から自己を守る行為」と捉え、就労や社会参加に短絡的に結びつけようとする支援のあり方を痛烈に批判した。そして社会の価値観や規範こそが本人を追い詰めていると警鐘を鳴らした。
芹沢俊介さん
その上で「往路、滞在期、帰路」の三つのプロセスに区分。ひきこもりに向かう往路を社会規範によって妨げず、「自分は自分でいい」と実感できる自己領域を十分に保証することが重要だと強調。ひきこもりを終える帰路のタイミングも本人の決定に委ねるべきだとした。
国の施策は長年、就労につなげる「地域若者サポートステーション」設置(06年度〜)、精神疾患治療が中心の厚生労働省のガイドライン公表(10年)など、「自立」に向けた支援が中心だった。厚労省は昨年1月、従来の方針を転換。本人や家族との対話を通じ、自らの意思で生き方や社会との関わり方を決められるようにする「自律」を目指すべき姿に位置づけた。

ただ「いる」ことが基盤
当事者・喜久井伸哉さんインタビュー
インタビューに答える喜久井伸哉さん
私は8歳の頃から学校に行けなくなった。芹沢さんの著書は「ひきこもりは解決しなければならない問題」とするネガティブな声に明確にノーを突き付け、...











