第9弾 新潟市

揺れる夏 2022新潟まつり

 3年ぶりに開かれる新潟市の新潟まつり(8月5~7日)。市民や関係者からは「やっと夏が来る」「今年こそは」と期待も大きい。しかし、新型コロナウイルスの流行「第7波」で、当初予定していた内容を大幅に見直し、民謡流しの中止、花火の延期が開催直前に決まった。一方で祭りの機運を盛り上げる「市民参画プロジェクト」は予定通り実施し、住吉行列や「お祭り広場」も6、7日に開催する。開催か中止か延期か。感染禍の収束が見通せない「揺れる夏」に、それぞれの関係者の思いを追った。(報道部・鈴木啓予ひろよ

<1> 民謡流し
「もう1年練習に励む」 相次ぐ中止にも心機一転

新潟日報 2022/08/02

 三味線、笛、たるの音が軽快に流れ、「アリャサ、アリャサ」と威勢のいい声がホールに響き渡った。7月下旬、新潟市民謡連盟が江南区文化会館で開いた練習会。目前に迫った新潟まつり本番に向け、約50人の練習に熱が入っていた。

 市民謡連盟の高綱敏博理事長(71)は「私たちにとって祭りは1年に1度の晴れ舞台。やっと舞台に立てる」と笑顔を見せたが、その5日後、民謡流しは中止が決まった。

民謡流しの中止が決まる前に行われた新潟市民謡連盟の練習会。本番を前に熱がこもっていた=新潟市江南区
民謡流しの中止が決まる前に行われた新潟市民謡連盟の練習会。本番を前に熱がこもっていた=新潟市江南区

 ここ2年、新型コロナウイルスの影響で、新潟まつり以外の行事も中止が相次いだ。

 市民謡連盟は2021年、新潟まつりの民謡流しを小規模にしてでも開催したいと考えたが、感染拡大で断念。後継者を絶やさないように、6年前から始めた歌や三味線などの養成講座もできなかった。

 モチベーションを維持することや技術の伝承が困難な中、メンバーは「できることをやろう」と、通信アプリ「LINE(ライン)」などで励まし合い、集まれる人たちで練習し、若手の指導もしてきた。

 自主練習を重ね、歌い手の認定試験に今年度合格した江南区の会社員、入山佳子さん(46)は7月下旬の練習会に参加した際、「本番を思うと緊張するが、初めて念願の舞台に立てることはとても楽しみ」と話した。

 それだけに、民謡流しの中止決定を「残念。縁がないのかな」と肩を落とす。それでも「私はまだまだ未熟。練習期間が増えたと思って、もう1年励みたい」と前を向く。

 高綱さんは「ウイルス禍は、みんなが悔しさをこらえてきた期間だった。次の発表の機会に向け、頑張っていく。来年こそは開催してほしい」と願う。