
「温泉は子どもと同じで授かり物。大事にしていきたい」と語る星雅彦会長
山奥の温泉の良さを守るため、共同で誘客活動に取り組む温泉宿のグループ「日本秘湯を守る会」が、活動開始から半世紀となる。全国145軒の宿で構成され、新潟県は全国で3番目に多い12軒が加入している。会長を務める栃尾又温泉「自在館」(新潟県魚沼市)の星雅彦代表取締役(65)に、秘湯を守る会の歩みや狙い、今後の展望などを聞いた。
-日本秘湯を守る会とはどういう組織ですか。
「朝日旅行会の創業者で、観光バスを使った団体旅行の草分け的存在である故・岩木一二三さんが『秘湯』という言葉を作った。湯治宿がコンクリート造りの観光旅館に変わっていった昭和40年代半ば、山奥の温泉宿は道路が悪くバスが入らないことから、大手旅行エージェントから相手にされなかった」
「だが岩木さんはそういう宿こそ、人が旅に出る時の心情に応えられると考えた。お酒を飲んで騒いで、お土産を買って帰る。大量販売・大量消費となった観光ビジネスのアンチテーゼとして、小さな宿がお互いに助け合っていこうと岩木さんが提唱し、日本秘湯を守る会が1975年4月に創立された。全国の33軒の宿で立ち上げた」
-守るのは温泉だけではないということですか。
「その土地の良さや、お客さんが旅に出ている気持ちをくみ取れる宿をひっくるめて秘湯。会では『秘湯は人なり』としている。世間から...
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