場内一周でスタンドのファンに手を振るDeNAの南場オーナー=横浜
場内一周でスタンドのファンに手を振るDeNAの南場オーナー=横浜

 プロ野球の横浜DeNAベイスターズが11月3日、日本シリーズでパ・リーグ王者のソフトバンクを破り、26年ぶりの日本一に輝いた。DeNAはTBSホールディングスから球団を買収し、2012年にプロ野球に参入。2015年1月には創業者の南場智子さん(62)がオーナーに就任した。プロ野球初の女性オーナーは、実は新潟市中央区の出身。新潟日報では節目ごとの取材を通し、球団や会社経営への思いに触れてきた。今回、南場オーナーとして初の日本一を祝い、過去のインタビュー記事などから一部を再掲載する。

<なんば・ともこ> 1962年生まれ。新潟市中央区出身。新潟高校、津田塾大を卒業し、米コンサルタント会社に入社。米ハーバード大で経営学修士(MBA)を取得し、1999年にDeNAを創業。オークションサイトや携帯電話向けポータルサイトなどを通じ、IT大手に成長させた。2015年には日本のプロ野球で初の女性オーナーに就任。2021年に経団連で女性初の副会長に就任した。

※年齢や肩書きなどは当時のものをそのまま掲載しています。

“有言実行”の秋

 2024年6月26日付  地元新潟での試合後 

   (巨人に2-3で敗戦)DeNAの南場智子オーナー(新潟市中央区出身)が地元、新潟での主催試合を観戦した。1点差で惜敗したが、「最後まで白熱した展開となりました。応援ありがとうございました」とコメントした。
 年に一度の新潟開催は昨年の巨人戦に続き、2連敗。「ふるさと新潟でしばらく勝利をお見せできていないことは悔しいです。実りの秋に良い報告ができるよう、全力で頑張ります」と話した。

26年ぶりに日本一を決め、記念写真に納まるDeNAの三浦監督(前列左から3人目)と南場智子オーナー(同4人目)ら

「ファンを楽しませる野球を」

2015年2月17日付 オーナー就任後インタビュー

 プロ野球DeNAのオーナーに先月就任した新潟市出身の南場智子氏(52)は、沖縄キャンプを視察するなど本格的な活動を始めた。5月9、10の両日は新潟市中央区のハードオフ・エコスタジアムで、新潟県内では今年唯一のプロ野球公式戦となるDeNA-巨人が行われる。南場氏に今後の球団運営や新潟での公式戦開催への意気込みなどを聞いた。

-オーナーとして初めてキャンプを視察しました。
 これまでもGMや監督とはよく会っていましたが、今回のキャンプで初めて選手と同じ釜の飯を食べました。選手はグラウンドでは大きく強く見えます。しかし、食事の時は礼儀正しい若者という感じで新鮮でした。

-女性初のオーナーという面に注目が集まっています。
 女性ということを今まであまり意識してこなかったので戸惑いも感じます。ただ、キャンプでは女性ファンからたくさん握手を求められました。女性の目線を生かして、さらに女性ファンを増やしていきたい。

-ファンから球場に足を運んでもらうための工夫はありますか。
 キャンプでは選手や球団幹部からファンへの感謝の気持ちを常に持つことや、なるべくサインに応じることなど具体的な話があり頼もしく感じました。試合では10点以上離されてもあきらめないのが中畑DeNAの真骨頂。最後までファンを楽しませる野球を見せたいです。

インタビューに答える南場智子さん=2015年2月、東京都渋谷区のDeNA本社

-新潟県での巨人戦開催が続いています。
 神奈川県以外で(昨年まで)3年連続の公式戦開催は新潟が初めてで、ずっと続けていきたい。私の古里であり、新潟市にはDeNAのカスタマーサポートセンターもあります。ただ、新潟での巨人戦を毎回観戦していますが、スタンドに(巨人の)オレンジ色が多すぎるので、(DeNAの)ブルーが多くなるように、新潟でもファンを増やしたいです。

野球に口出さずも「凡事徹底」

2016年12月3日付 初のCS進出を達成

 今年のプロ野球セ・リーグは横浜DeNAベイスターズが3位となり、球団初のクライマックスシリーズ(CS)でファイナルステージに進出した。球団オーナーとして2年目のシーズンを終えた新潟市出身の南場智子さんに、昨季の最下位から躍進した要因や、来季に懸ける思いを尋ねた。

ーDeNAの今季の戦いぶりはどうでしたか。
 選手は本当によく頑張った。もちろん優勝を目指していたが、少なくともCS進出と言ってきたので、それが達成できて良かった。CSファーストステージは試合内容も良く、チームの成長を感じた。中畑清監督時代から取り組んできた若手の育成が実を結んだ。さらに先発ローテーションに入った新人が活躍するなど、選手層が厚くなってきたことが躍進の要因だと思う。

ーチームの飛躍はあったものの、広島の独走を止められませんでした。
 私は野球そのものには口を出さないようにしている。ただ、ラミレス監督、高田繁ゼネラルマネジャー(GM)には「広島との差は感じた」と伝えた。DeNAが今季の目標に掲げた「凡事徹底」という点で、広島が一枚上だった。
 筒香やロペスは良かったが、全員が4番打者のような構成ではうまくいかない。凡ミスが出たり、細かいサインプレーを徹底できなかったりというところがあった。そこが広島との一番の差。リーグ優勝を目標にする来季も、スローガンに再び「凡事徹底」を掲げることでGM、監督とも意見が一致した。

ー今季は主催試合の観客動員が194万人で、前身の横浜ベイスターズが日本一になった1998年を上回りました。
 球場のトイレをきれいにするなど運営面を地道に改善してきた効果もあるが、何よりもファンにいい野球を見せられたことに尽きる。しかし、座席稼働率が93%に達していて、ファンから「席が取れない」との苦情も届いている。球場の増席には時間がかかるので、スポーツカフェなど球場外で試合が見られるような仕掛けを考えたい。

ー新潟県では来年7月4日にDeNA-阪神戦が行われます。
 球団が私の気持ちをおもんぱかったのか、新潟での試合を組み込んでくれた。新潟シリーズは5年間続けているので、ファンも増えてきている。「継続は力なり」と思って頑張りたい。

「常識を疑う習慣を」

2019年5月19日付 平成PLAYBACK特集

 今年設立20周年を迎えたIT大手ディー・エヌ・エー(DeNA)を創業した南場智子さん(57)は、インターネットと携帯端末による情報通信革命が起きた平成を駆け抜けてきた。「1回だけの人生なので面白く生きたい」。令和の時代も好奇心を源に、挑戦を続ける姿勢を崩すつもりはない。

 「起業が大きな転機。そこから人生を歩み始めたようなもの」という南場さんの平成は、ネットオークション事業から始まり、携帯端末のゲームサイト事業などで成長した。「携帯端末での情報発信は当時、日本が世界トップだった。わが社は世界的にもモデルケースとなる大成功を収めた」と自負する。

 プロ野球・横浜ベイスターズの運営に乗り出すなどスポーツ事業も展開。「8日に新潟(ハードオフエコスタジアム)で試合があり、故郷に帰れるので楽しみ」とほほえむ。現在はヘルスケア、交通に関する事業にも取り組んでいる。

「令和の時代は新しい楽しみ方、生き方を提唱したい」と語る南場智子さん=2019年4月、東京都渋谷区のDeNA本社

 成功をつかんだ一方で、悔しさも残る。「ガラケー」と呼ばれる従来型の携帯電話が主流だった日本の企業は、スマートフォンの普及とともにグーグル、アップルなど...

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