
自民党の派閥「志帥(しすい)会」が4月に「解散式」を開いた。派閥裏金問題を背景に逆風にさらされた志帥会は、かつて党内の主流派に位置付けられていた。その中心に立っていたのが、志帥会を率いた二階俊博元幹事長(86)だ。憲政史上最長の政権を築いた安倍晋三元首相とともに、自民党の「1強」として君臨。政界で存在感を放ち続けた。そんな二階氏が絶頂期の頃、新潟県佐渡市の漁師たちの目の前で“政治的迫力”を見せた、ある一幕があった。「俺が言っているんだからやれ」―。その振る舞いには、二階氏が政治の師と仰ぐ田中角栄元首相の“面影”が漂っていた。
あいさつもなく、通話は始まった。「ちょっと俺から言ってきたということで、関係者を招集して対応してくれないかね」。ドスの利いた声だった。電話を切ると二階氏は開口一番、「やります」と告げた。「ありがとうございます!」。感謝の言葉が飛び交った。

2019年8月初旬、東京・永田町の自民党本部周辺に響くセミの鳴き声は、二階氏がいる党本部4階の幹事長室にまで届いていた。「本当に困っているんです」。新潟県選出の衆議院議員の案内で幹事長室を訪れたのは、...
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