
プロスケーターの羽生結弦さん(30)が対話しながら問いを深める「哲学対話」に挑戦した。語り合ったのは作家で哲学者の永井玲衣さん(33)。幼い頃から哲学的な問いに関心があったという羽生さんが、アイスショー「Echoes of Life」エコーズ・オブ・ライフ 羽生結弦さんが制作総指揮・出演し、昨年12月〜今年2月に開かれたアイスショー。羽生さんが演じた主人公は遺伝子操作で生まれたとの設定で、自分の存在意義を問いながら、世界に希望を見いだすという内容。羽生さんが執筆したSF風の物語を基にしている。その中で、永井玲衣さんのエッセー集「水中の哲学者たち」を引用している。を制作する際に、永井さんの本を参照したのがきっかけとなった。競技における「意識とは何か」という疑問から、震災における「当事者」という言葉まで、羽生さんが氷の上で深めてきた思索の一端が、対話から浮かび上がった。
<哲学対話> 学校で教わるような哲学ではなく、「働くって何?」といった、身近だが簡単には答えの出ない問いについて、複数人で語り合い、深く考える活動。結論を出すことを目的とせず、他者の話を聞き、考えながら話すことで、自分の思い込みや当たり前に思っている価値観を問い直すことにもつながる。近年、教育現場や企業研修などでも活用されている。
初めての「哲学対話」に、羽生結弦さんは「割と『無』で来ました」と切り出した。各地で...
残り2038文字(全文:2320文字)