―縦断解析で明らかになった若年女性の多様な体重推移パターン―

藤田医科大学(愛知県豊明市)医学部臨床栄養学講座 飯塚勝美教授、健康管理部 成瀬寛之教授らの研究グループは、低体重状態の維持に関する4つの解析方法の比較を行い、20代女性で低体重を1度でも経験した人の多くは、正常範囲と低体重を行き来するとの仮説に至りました。実際に低体重女性のBMIは18~19に分布し、正常範囲と低体重を行き来することがわかりました。20代では低体重への流入が多い一方、30代後半では低体重から正常体重への移行が増えます。
30代以降も低体重に留まる人は全体の40%程度で、残りは正常体重へ移行しました。さらに、低体重に留まる人の特徴として、BMIも17.5程度と低い傾向が見られました。以上から20代女性の低体重は一様ではなく、異なるパターンが存在することがわかりました。低体重による健康被害を調査する上では、横断調査よりも縦断調査に基づいた低体重の評価が必要と考えられます。

本研究成果は、学術ジャーナル「Nutrients」で発表され、併せてオンライン版が2026年4月3日に公開されました。
論文URL : https://www.mdpi.com/2072-6643/18/7/1156


<研究成果のポイント>

短期的な指標(年度ごとの推移)と長期的な指標(状態の占有率、Aalen–Johansen推定量、カプランマイヤー法)では低体重維持率の大きな乖離がみられ、低体重状態が維持されるわけではないことがわかりました。
正常体重から低体重への流入・低体重から正常体重への流出率は、22~27歳で流入が流出を上回り、27~37歳で平衡状態、37~47歳で流出優位を示しました。
20代で低体重と1度でも言われた人のBMIは、18.0~19.0 kg/㎡に集中しました。
時間加重分類では、持続型(観察期間中の低体重時間≥75%;40.1%、BMI: 17.54)、中等度型(50~74%;17.6%、BMI: 18.40)、間欠型(25~49%;17.6%、BMI: 18.97)、一過性型(<25%;24.8%、BMI: 19.49)の4群にわかれました。
低体重は不均一な集団であり、縦断的な低体重サブグループと臨床転帰の関連性を検討することで、リスクの高い集団を特定できる可能性があります。

<背 景>
シンデレラ体重という言葉があるように、若い女性の低体重は日本では頻度が高く、社会的な関心が高まっています。一部の学会でも低体重・低栄養症候群として取り上げられていますが、日本における実態は不明です。
研究グループは若い低体重女性でビタミン欠乏を伴う頻度が高いこと、低体重女性では体重とは独立してリンパ球数と体脂肪率が関係することを明らかにしました。さらに低体重女性の中でもBMI18~19付近の方が、一番、腸内細菌の多様性だけでなく、食事の多様性も良好であることを報告しました。そのためひとくくりに低体重といってもいくつかのサブグループに分かれるのではないかと考えました。さらに、低体重の期間がさまざまな低体重の副作用(例:骨粗鬆症)に影響すると考え、今回は日本人の若年低体重女性における体重の軌跡を評価することにしました。これにより、低体重群に存在する持続群を抽出することができれば、低体重に伴う副作用(骨粗鬆症、不妊、月経異常)との紐付けを行うことで、今後、本当に治療が必要な低体重のサブグループを、同定できると考えられます。


<研究手法・研究成果>
2003年から2025年までの間に、藤田医科大学病院で健康診断をうけた藤田医科大学の教職員を対象に研究を行いました。そのなかで、20歳代で1度でも低体重を指摘されたことがある女性883名を対象に、平均6.1±4.2年間の後ろ向き解析を行いました。
(1)年度ごとの推移、(2)状態の占有率、(3)Aalen–Johansen推定量、(4)カプランマイヤー法 の4つの手法を比較したところ、手法1と4の間で低体重の維持率は78.1% vs. 47.1% と31%も異なることがわかりました。流入・流出率の定量化を含む双方向フロー解析では、正常体重から低体重への流入・低体重から正常体重への流出率をみると、22~27歳で流入が流出を上回り(35.7%/年 対 20.7%/年、流出/流入比:0.58)、27~37歳で平衡状態(比:1.02)、37~47歳で流出優位(比:4.92)を示しました。20代で1度でも低体重と言われたことのある人のBMIは18.0~19.0kg/㎡に集中(42.7%)しました【図1】。時間加重分類では、持続型(観察期間中の低体重時間≥75%;40.1%、BMI: 17.54 kg/㎡)、中等度型(50~74%;17.6%、BMI: 18.40 kg/㎡)、間欠型(25~49%;17.6%、BMI: 18.97 kg/㎡)、一過性型(<25%;24.8%、BMI: 19.49 kg/㎡)の4群にわかれました【図2】。持続して低体重の人はBMIも17.5と低く、全体の40%程度でした【図2】。


[画像1]https://digitalpr.jp/simg/2299/132683/400_264_2026040914055169d733af062e3.png
[画像2]https://digitalpr.jp/simg/2299/132683/300_309_2026040914055169d733af03530.png

<今後の展開>
今回の検討では横断研究でなく、縦断データを用いて、日本人低体重女性のBMIの軌跡を世界で初めて明らかにできました。20代で低体重と言われた人の60%は正常体重へ最終的に変化していくが、30代以降も低体重が続く人が40%程度いることがわかりました。低体重状態の蓄積は、骨折など将来のリスクにつながる可能性が指摘されており、骨折や月経異常などのアウトカムとの関連を明らかにする必要があります。また今回は、1施設の研究結果のため、低体重男性の軌跡は調べられませんでした。今後はより大人数集団の縦断データを使用して、日本人全体での低体重の軌跡を明らかにします。


<文献情報>
論文タイトル:Underweight in Young Adult Women as a Dynamic Nutritional State: Evidence from Four Complementary Longitudinal Methods

著者:飯塚勝美1、松浦瞳1,2、柳ことね3、平岩衣里1,2、佐藤由佳1,2、垣内清美3、和田理紗子1、出口香菜子1、成瀬寛之3

所属:
1 藤田医科大学 医学部 臨床栄養学講座
2 藤田医科大学 医学部 学生
3 藤田医科大学 健康管理部

DOI: 10.3390/nu18071156


本件に関するお問合わせ先
学校法人 藤田学園 広報部 TEL:0562-93-2868 e-mail:koho-pr@fujita-hu.ac.jp

関連リンク
【藤田医科大学公式ホームページ】シンデレラ体重がもたらす健康リスク 若い女性のモデル体型指向に警鐘 ~本学教職員44名を対象にした解析結果より~
https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv000000ivqw.html