「曲げて、曲げて、曲げて、けれど折れないようにすることです」と、ローマ教皇は助言したという。ドイツ首相を16年にわたって務めたアンゲラ・メルケル氏が、著書「自由」の中で当時のフランシスコ教皇との会談を振り返った印象深いシーンだ。メルケル氏は「そのイメージが気に入った」そうだ。なぜなら、それは彼女の政治姿勢そのものだからだ。

 逆に言えば、メルケル氏は妥協の名人でもあった。私は去年、メルケル氏にインタビューをした。その時、彼女が最後に述べたのは「妥協をよしとすることです。妥協をする覚悟がなければ共存はできないのです」という言葉だった。そして「休暇に何をしたいか、どこに行きたいかと計画を立てるとき、家族みんなが違う意見を持っている。でも、ともに旅行をするなら、妥協をしなければならないでしょ」とほほ笑みながら締めくくった。

 私は、このところの高市早苗首相を見て、よくメルケル氏の言葉を思い出す。今国会の会期末まで1カ月を切り、...

残り1487文字(全文:1899文字)