ARを活用した新スポーツ「HADO」の大会=12月17日、三条市元町

 拡張現実(AR)実在する風景に、仮想の視覚情報(映像など)を重ねて表示することで、目の前にある現実の風景に、視覚情報を仮想的に拡張したもの。ARは、英語でAugmented(増加された) Reality(現実)の略の技術を取り入れたテクノスポーツ「HADO(ハドー)実際のフィールドを使い、仮想のボールをぶつけ合う拡張現実(AR)技術を活用した新時代の対戦型スポーツ。相手チームの選手に当てた状況に応じてポイントが与えられ、得点が多いチームが勝ちとなる。」。仮想のボールをぶつけ合う対戦型競技は、漫画やアニメで表現されるような空想を現実世界で繰り広げる。身体技能を争う「スポーツ」とも、ゲームの腕前を競う「eスポーツ「エレクトロニック(Electronic=電子などの意味)・スポーツ」の略で、コンピューターゲームやビデオゲーム(テレビゲーム)をスポーツ競技として捉えた呼び方。賞金の出る大会が開かれ、プロの選手として活躍する人も出ている」とも一線を画す、日本初の新スポーツだ。競技人口は増え続け、世界の約40カ国でプレーできるまでに広がっている。12月、新潟県内で初めて開かれた「HADO」の大会に参戦し、新感覚のスポーツを体感してみた。(写真映像部・金子悟)

※動画はいずれも数秒です

なんだ、これは!?「HADO」のプレーヤーと拡張現実(AR)が重なった画面。会場内のモニターで映し出される

 大会は各チームが3人対3人で80秒間対戦し、仮想のボールを当ててスコアの高い方が勝つルールで実施された。高校時代の級友3人とチームを結成し、三条市で開かれた大会に臨んだ。わがチームを含め、ほかの出場者の中にも経験者は1人もいない。全員が運営スタッフの解説を聞き入り、基本動作を頭にたたき込む。

 仮想の攻撃球「エナジーボール」は、胸の前で拳を握って突き出すと出る。

右拳を前に突き出すと、奥の画面では「エナジーボール」が飛び出している

 また、仮想の守備壁「シールド」は、脚の脇に手を下げて勢いよく上げると発動する。

右手を垂らして振り上げると、奥の画面では「シールド」が出る

 動作確認後は利き腕にセンサー、ARが見えるゴーグルを装着。試しにエナジーボールを出してみる。「バシュッ」の効果音とともに光球が進んでいく。「これって現実!?」。半信半疑で立て続けに右拳を突き出すと、次々と相手コートに打ち込まれていく。右手を垂らして振り上げると、シールドも築かれた。「特殊能力が身に付いたみたい」

ゴーグルを付けると、拡張現実(AR)として重ね合わされる「エネジーボール」や「シールド」を見ることができる

 そんな高揚感を抱いて迎えた初戦。チーム戦術もフォーメーションもノープラン。ひたすらエナジーボールを放って、放って、放ちまくる。当たっているのか、いないのかも分からぬまま、80秒が終了。地味な動きの繰り返しながら、呼吸は乱れている。ただ、ゴーグルには「WIN」の文字。「勝っちゃった!」

 肩で息をしながら、気付いたことがある。「ボールを当てられても痛くない」。身体的な接触も一切ない。痛みやけがの心配がないのは、未経験者や初心者にとってはありがたい。何より、純粋に楽しい。

実際に動いている人だけを見ると、どのようなことが起きているのかが全く分からない。不思議な動きをしている人たちにも見える

 2戦目からは、ハーフライン付近を頂点とした三角形の陣形を敷く戦術を徹底。自ら先頭に立ってシールドを築き、エナジーボールを放つ。両脇を固める級友が攻撃をサポート。これがピタリとはまった。残る3試合に競り勝ち、全勝でリーグ戦をトップ通過した。

手前が「HADO」のプレーヤーで、奥には拡張現実(AR)が重ね合わされた映像が映し出される

 しかし、決勝トーナメントは甘くなかった。準決勝は完敗、3位決定戦も大敗。心なしか脚が張り、全身に疲労感が残る。「年のせいか…」。中年の厳しい現実を思い知らされる。

 対戦チームは俊敏さで勝る小学生や中学生のほか、さまざまな性別のメンバーで構成されていて多彩。動きやルールが簡単なこともあり、選手たちが世代や性別、体格などを超えて楽しむ姿が印象的だった。

試合は、世代や性別、体格の差に関係なく楽しめる

 級友と同じフィールドに立つのは、高校時代以来だけに実に四半世紀以上ぶり。久しぶりに同じ時間と空間を共有でき、かけがえのない体験にもなった。

 大会翌日、右腕、右太ももに若干の違和感を覚えた。どうやら軽い筋肉痛らしい。身を持ってARのリアルを体感し、HADOはゲームではなく、スポーツなのだと思い知らされた。

<メモ>新潟県内で「HADO」は、専属インストラクターがいる「HADOフィールドベルパルレ寺尾店」(新潟市西区寺尾東2)で体験することができる。料金は1時間につき平日が1650円(小学生~高校生1100円)、休日は2200円(同1320円)。大人数の場合は割引もある。営業時間は午前9時~午後9時、問い合わせは、025(268)0505。

<HADO(ハドー)>実際のフィールドを使い、仮想のボールをぶつけ合う拡張現実(AR)技術を活用した新時代の対戦型スポーツ。相手チームの選手に当てた状況に応じてポイントが与えられ、得点が多いチームが勝ちとなる。新潟市出身の福田浩士氏が最高経営責任者(CEO)を務めるmeleap(メリープ、東京)が開発した。各種大会やランキング制が設けられ、賞金がもらえる大会もある。