思い返せば、新型コロナウイルス感染症の拡大時は、動画配信サービスだけが友達だった。憂鬱(ゆううつ)な日常をしばし忘れたくて、韓国ドラマばかり見ていたあの頃。物語に没頭したいのに決まっておなかがすき、集中を乱された。私が食いしん坊だからではない。作中に出てくる食べ物があまりにもおいしそうだからだ。

 取材のため、駐新潟韓国総領事館の協力で4月、韓国・ソウルを訪れた。誓って私は食いしん坊ではないが、せっかくソウルに来たのだから、あのグルメを味わってみたい。K-POPと並ぶ韓国製コンテンツの代表格・韓国ドラマに登場した地などを歩き、現地のグルメを味わった。(デジタルグラフィックスセンター 由井佳苗)=2回続きの2=

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◆日本の庶民、スンデに挑む

 韓国にも「花の金曜日」という意味の言葉があるそうだ。「プルグム」。その名の通り、金曜日の午後9時を回る頃から、ソウルにある若者の街・弘大は人が増えていった。

 路地には屋台が出ていた。夕方に通った時には、なかった気がする。屋台といえば「トッポッキ」だろう。もちもちした棒状の餅に甘辛いたれを絡めた料理。デスゲームを描いたヒット作「イカゲーム」などに出てきた。ようじに刺して食べると、濃厚な味とたれの甘みで、こめかみの下がきゅんとする。

屋台の定番メニュー「トッポッキ」。横にあるのはお茶ではなく、おでんのだし汁

 メニューの写真を見ていると、どす黒い色の腸詰めが目に入った。...

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